中国大手のICTメーカー、華為技術(ファーウェイ)は、通信事業者向けだけでなく法人向けビジネスの拡大にも力を入れている。しかも、IoT関連の製品・サービスに重きを置いており、一つのプラットフォームと二つの接続方式、一つのOSをつなげる「1+2+1」戦略を打ち出している。中国本社で実施した、日本の報道関係者を対象としたメディアツアーをレポートする。
法人向けビジネスは43.8%増

ジョー・ソー
産業ソリューション担当
CTO メディアツアーの戦略説明会では、まず法人向けICTソリューション事業グループのジョー・ソー産業ソリューション担当最高技術責任者(CTO)が「法人向けビジネスは力強い成長を維持している」とアピール。実際、売り上げは前年比43.8%増を記録し、そのうちパートナー企業経由が76%を占めており、「パートナーがいるからこそ、当社のビジネスが成り立っている」ことを訴えた。
では、なぜ大幅な伸びをみせているのか。それは、各国・各産業に適したソリューションを提供しているからだという。例えば、ケニアでは犯罪を防止するためのスマートシティ構想に参画して、犯罪率が46%減少することに寄与した。ロシア連邦中央銀行にカード決済システムを提供し、1億枚におよぶ銀行カード発行のサポートや1日に1000万件以上の取引を処理することを実現した。ジョー産業ソリューション担当CTOは、「ICTがビジネスの中核的な存在になりつつある」と前置きしたうえで、「当社がビジネス指向のICTインフラを構築し、オープンなAPIによってパートナーがアプリケーションを組み合わせて提供するというエコシステムが構築できているからこそ、国や産業ごとに特化したソリューションが実現できる」という。加えて、「技術をオープンにすることでベンダーロックインを避けて利用企業を最大化し、例えばOSSの開発者や標準化団体などとエコシステムをつくることも可能だ」と自信をみせている。
産業デジタル革命に対応

リ・サンチ
プロダクト&
ソリューションフループ
CTO また、説明会にはプロダクト&ソリューショングループのリ・サンチCTOも登場。次の産業デジタル革命を支えるものとしてIoTを挙げて「IoTの基礎となるものが一つのOSと二つの接続方式、一つのプラットフォーム。『1+2+1』が当社が掲げるIoT戦略だ」と説明した。
一つのOSとは、自社OSS「Huawei LiteOS」を指している。10KB未満という非常に小さいOSで、チップに組み込まれて接続する機器に搭載される。二つの接続方式とは、eLTE(エンタープライズ向けLTE)、NB-IoT、5Gなどの長距離通信と、Wi-Fi、NFCなど短距離通信のことだ。その二つの接続方式を「IT接続管理プラットフォーム」で管理する。これがファーウェイの掲げる1+2+1戦略だ。
ほかにも、法人向けICTソリューション事業グループのドン・ウー企業ネットワークマーケティング&ソリューションセールス担当バイス・プレジデントが、無線LANやクラウド・ファブリックの分野で売上成長率が世界1位になったことをアピールしたことに加えて、プロダクト&ソリューショングループのロナルド・ラフェンスパーガー・データセンター・ソリューション担当CTOが、自動管理が可能な「ManageOne」によってデータセンターの統合管理でシンプルに運用できることを説明した。

本社の展示ホールではIoTを具現化したソリューションを披露
また、本社には展示ホールが設けてあり、IoTを実現するためのソリューションを披露している。この展示ホールには、取引先やユーザー企業などが訪れるケースが多く、ファーウェイの製品・サービスの優位性を認識する傾向が高いようだ。これまで通信事業者向けに製品・サービスを提供することがビジネスのメインだったファーウェイが、今は法人向けビジネスの拡大も実現している。IoTを切り口に、市場どのようなポジションを確立するのかに注目が集まりそうだ。