米デルは、グローバルでパートナービジネスを強化している。日本法人では2015年8月に平手智行社長が就任してから、矢継ぎ早な改革を断行。経営・事業幹部をパートナーに「顔を見える体制」にしただけでなく、ダイレクト販売向けが主だったパートナー向けサポートの改革を進めている。米デルはEMCなど有力メーカーの買収を相次ぎ発表し、製品・サービスを増強中だ。当然、国内でサポートをする担当者には、技術面を含め、より広範囲で高度なスキルが求められる。正社員約500人を要する同社サポート&サービスの主力拠点である宮崎市の「宮崎カスタマーセンター」を取材した。(取材・文/谷畑良胤)
高度なエンタープライズ製品のサポートを宮崎で
同センターは、2005年11月に川崎市に次ぐ第二の拠点として開設した。今年11月で丸11年が経つ。場所は、JR宮崎駅から徒歩10分程度の市中心街に位置する。24時間365日のサポートを交代制で対応する社員が通いやすい立地だ。デパート(宮崎寿屋百貨店)だったビルの4階から7階のフロアーを改装。当初100人規模だった従業員数は、現在約500人が勤務するまでに拡大した。ほぼすべてが正社員(エンジニア)で占められ、競合他社に追随を許さない体制が敷かれている。

市中心街にある同センターの外観

宮崎カスタマーセンターの従業員約500人は、ほとんどがエンジニア
約500人の内訳は、350人がユーザーサポート担当、100人が営業部隊で製品・サービスの購入を検討しているユーザー企業からの問い合わせに応じるほか、実際の注文や発送指示なども行う。昨年からはこれに加え、ディストリビューションで提携したダイワボウ情報システムとソフトバンクコマース&サービスや二次店である販売パートナー向け担当を増強している。

宮崎カスタマーセンター
金子知生
センター長 金子知生センター長は、「『驚きのサポート』の実現を目指している」と、パソコンやワークステーション中心のサポートから、サーバー、ストレージなどのハードウェア製品に加え、セキュリティや仮想化といったソフトウェアなど、新たに加わった製品を問わず「国内最高のサポート」(同)になりつつあると能力の向上を自負する。11年で積み上げた経験から自信がみて取れる。
この自信の裏づけとなっているのは、デルがグローバルで共通のサポートプログラム(8月22日号で既報)が長けているだけでなく、要求が厳しい日本企業向けの固有サポートや、独自に実施している顧客満足度を測る調査「イー・サーベイ」がある。イー・サーベイは、サポート終了後に顧客に対し実施する調査で、0~10の採点で9割以上が7以上(満足)が付くことを指標にしている。「すでに9割を超えている」(金子センター長)が、これからは、技術習得が難しい製品が増えるなかで、この数値をいかに維持するかが課題だ。
オペレーターはエンジニア
同センターのオペレーターである正社員は、基本的に資格を有する技術レベルの高いエンジニアだ。センター内の一角には、過去に販売した製品から最新機器までが揃う検証ルームがあり、数人のチームが解体作業などをしながら故障箇所の対策や要因などを練っていた。エンタープライズ製品とクライアント製品の両方では「プロサポートスイート」と呼ぶサポート制度を用意。対象顧客の導入製品や規模、オンサイト保守の有無など要件に応じ保守契約する。顧客には専任のアカウントマネージャーを配置するサポートも用意。リモート監視で、事前に問題を発見して予防措置もする。「マネージャーは、権限をもって全国の社員を動かせる」(金子センター長)という。同センターの人材育成は、パソコンの技術に始まり徐々にエンタープライズ製品へと移行する。「多くの社員がエンタープライズ製品の担当を目指す」(同)と、社員が希望に応じて、担当領域を変えられるキャリアパスが確立されているのも見逃せない。
顧客を増やす目的で、ダイレクト販売で行っている「アフター・ポイント・オブ・セールス(APOS)」と呼ぶ、電話やメールなどを使った顧客獲得のインサイドセールスをパートナー向けに一部開始。また、認定パートナーでの「自営保守」を可能にするデル製品の技術的な専門家「トラステッド・アドバイザー」を養成する資格制度も強化中だ。「パートナーとのやり取りは、この1年でかなり増えた。もっと徹底してやる」(金子センター長)と、現場のフローを含めた改善策はとどまるところをしらない。
クラウドコンピューティングの普及を含め、顧客のITシステムは複雑になり、最先端のソリューションを求めるなど、顧客の要求が厳しくなっている。デルは、ハードの提供だけでなく、インフラ・コンサルティングから導入支援まで、顧客やパートナー向けのサポートを確立しつつある。パートナービジネスでは後発の同社が、どこまでパートナーの満足度を高める体制が築けるか注目したい。