高専の学生が待ちに待った季節がやってきた。全国高等専門学校 第27回プログラミングコンテスト(高専プロコン)の本選は、10月8・9日の2日間にわたって三重県伊勢市で開催された。予選を通過した課題・自由・競技部門の計101チームの高専生たちが、全国から会場の伊勢市観光文化会館に集結。今大会のテーマ「輝く真珠は僕らの発想(アイデア)」の下で、この日のために磨いてきた技術とアイデアを披露した。(取材・文/前田幸慧)
積み上げてきた成果を披露
高専プロコン初日は、課題・自由部門のプレゼンテーション審査と競技部門の1回戦が行われた。課題部門では、与えられたテーマに沿った作品を制作・発表・展示する。今大会のテーマは、2020年開催の東京五輪を意識した「スポーツで切り拓く明るい社会」。ひと言でスポーツといっても、種目の違いや、見て楽しむ/プレーして楽しむという切り口の違いから、高専生たちが考えてきた作品は実に多彩だった。自由部門では、各チームがジャンルにとらわれない独創的な作品を紹介。両部門のプレゼンテーションでは、発表者の緊張が伝わってくるシーンや、審査員から寄せられる鋭い質問にたじろぐシーンがみられたが、説明方法や資料に工夫を凝らしながら、自分たちの作品に自信をもって力強くアピールしていた。

高専プロコンの華、競技部門の今年の競技は、「ホントの魅力がミエますか?」をテーマにしたパズルだ。多角形の木片でできたパズルのピースを制限時間内に実際に手で枠内に並べ、完成させる「早さ」と「正確さ」を競う。完成させると、ピースと枠の形状から、伊勢志摩・鳥羽の名所名物の絵が浮かび上がる仕組みだ。各チームがどのようにして枠やピースを電子データ化し、開発したアルゴリズムを駆使していかに早く正確な回答を導き出すかが勝負の分かれ目になる。
一回戦では、各チームがPCだけでなく、カメラやスキャナなどを持ち込んで、それぞれの手法でパズルを解きにかかった。多くのチームが回答を導き出すのに四苦八苦するなか、二人の司会者による実況が場を盛り立て、観客はステージから目をそらすことができない。多くのチームがパズルを完成させることができず、ピースを枠内に並べて試合を終えるなか、第2試合で初めて絵を完成させた呉高専の「快速カケライナー枠行き」チームには、観客席から大きな拍手と歓声が上がった。しかし、結局、完全に回答したのは呉高専一校にとどまり、初日の競技を終えた。急きょ発生したルール変更への対応もあり、この晩、各チームは寝ずにプログラムを改良し、翌日に備えた。
まさかの展開の二日目、人力?
そして迎えた二日目。競技部門は、一回戦第4試合の再試合と敗者復活戦、準決勝、決勝が行われた。ここで競技の様相が明らかに変わり、まさかの展開になっていく。
敗者復活戦では5校がパズルを完成させ、会場は大いに沸いた。しかし、問題の難易度が上がった準決勝あたりから、競技の様相が変わり始める。それまでは時間をぎりぎりまで使ってパズルの完成を目指すチームが多かったが、戦法をスピード重視に切り替えて、人力でピースを置けるだけ置いて回答を終えるチームが現れはじめたのだ。実際に、最後まで完成を目指したチームがピース数の差で敗れてしまうことがあり、並べた「ピース数」と「早さ」だけで勝つことができるとわかれば、各チームの切り替えは早かった。決勝では、プログラムを走らせるか、人力だけでパズルを解くか、試合に勝つか勝負に勝つか、各チームは決断を迫られた。その結果、途中までプログラムでピースをまとめ、ある時点で人力に切り替えるチームが多くなったように思う。
こうした戦いの結果、競技部門を制したのは、同時開催のNAPROCK国際大会に出場したモンゴル科学技術大学だった。高専プロコンの優勝・文部科学大臣賞を受賞したのは、2位で試合を終えた弓削商船高専「一致百慮」チーム。結果として、組んできたプログラムを走らせる場面が少なくなったが、ある上位入賞チームが壇上で「情けない気持ちだ」と語ったことが印象的だった。また、「プログラミングがうまくできていたとしても、時間内に終えることは難しかった」との声が多く、パズルが非常に難題であったことがうかがえた。

高専プロコン競技部門を制した弓削商船高専「一致百慮」チーム
課題・自由部門は、デモンストレーション審査、展示審査で作品を評価。その結果、課題部門は選手目線の映像や音声を取得して動きを伝える東京高専の「リアルタイムに選手とシンクロするスポーツ観戦システム」が、自由部門は主管校である鳥羽商船高専の「みつばちず──ドローンを用いた防災減災地図作成システム」が、それぞれ最優秀賞・文部科学大臣賞に輝いた。
神沼靖子審査委員長の講評を聞いて閉会式を終えた高専生たち。二日間で力を出し切り、徹夜組も多いだろうに、宇治山田駅に向かう学生たちの顔は満足げに輝いていた。来年の高専プロコンは、山口県徳山市、主管校は大島商船高専での開催を予定している。
東芝ITサービス
今年から高専プロコンのスポンサーに
毎年多くの企業が高専プロコンを支援している。東芝ソリューションは、特別協賛を始めて11年。今年は新たにグループ会社の東芝ITサービスも協賛企業に加わった。

東芝ITサービスの杉山寧部長(左)と吉澤淳一郎グループ長
「高専生たちは、何でも『まずはやってみよう』という気概があり、生き生きしている」とプロコンをみた印象を語る東芝ITサービスの杉山寧・サービス商品・技術開発部部長。「技術はトライアンドエラーの繰り返しで、失敗を次にどう生かすかが重要だが、すでにみんなそれをやっている」と高く評価する。また、吉澤淳一郎・人事総務部人事担当グループ長は、「当社の技術系社員のほぼ全員が高専出身で、活躍している。技術革新が進むIT社会で、高専生の柔軟な思考力を発揮してほしい」と、高専生に大きな期待を寄せた。