JIPテクノサイエンスは、社会インフラの「長寿命化」を成長ビジネスの柱に位置づけている。橋やトンネルといった社会インフラの修繕計画の策定支援ソフトの販売が好調に推移。「橋やトンネルの点検管理システムは他社でもあるが、修繕計画の策定による長寿命化までカバーするパッケージソフトは国内唯一」(同社の家入正隆取締役)であることがヒットの背景にあると話す。(安藤章司)

 社会インフラ「長寿命化」のニーズが高まっているのは、築50年を超える構造物が急速に増えているからだ。例えば、国内の主要な橋梁で築50年を超える割合は2013年が18%だったのに対して、23年には43%、33年には67%に増える見込み。高度成長期に建設ラッシュがあったためで、トンネルや道路、港、河川といった構造物も同様に老朽化が急速に進む見通しだが、国や自治体の予算は限られている。そこで点検データをもとに過不足なく修繕計画を立てる長寿命化支援システムの「長寿郎シリーズ」のヒットにつながった。同シリーズはこれまで累計で400事業者に売れている。

 長寿命化への取り組みが評価されるかたちで、この3月、JIPテクノサイエンスは大阪府から社会インフラの維持管理システムを受注したと発表。17年秋から仮運用をスタートし、19年度から本稼働させる予定だ。府内の構造物の点検や補修の履歴データを一元的に管理し、効果的な長寿命化計画をつくる支援を行うもので、限られた予算や人員を有効活用する。

家入正隆
取締役


 JIPテクノサイエンスの家入取締役建設ソリューション事業部長兼インフラソリューション事業部長は、「ポイントは長寿命化の計画を立てて、限られたリソースを戦略的、効果的に投入することにある」と話す。点検や補修データを可視化することで、今年度は橋梁に予算を集中させたり、あるいは別の河川を重点的に補修するなど、予算を戦略的に使う計画策定が可能になる。計画が明確になれば、計画に対して進んでいる、あるいは遅れているといった比較もでき、もし遅れているならば手あてをして計画通りに戻す行動もとりやすい。

 パッケージソフトであるため、耐震基準が見直されれば、自動的に長寿郎シリーズのパラメータが改定され、計画の見直しに反映できる。

 長寿郎シリーズのポイントは計画立案にあるが、一方で計画に不可欠な点検データの収集領域の研究にも取り組んでいる。国のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に参加するかたちで、IoTを応用した道路の点検システムを開発している。道路の傷み具合は、通常、高価な専用機器を使って点検しているが、同社はスマートフォンに内蔵されている加速度センサと傾きセンサを使って、路面状況を測定する計測アプリを考案。自動車で走るだけで、その揺れ具合から道路の傷み具合を測定する。

 従来の専用機器ほど精度は出ない部分があるものの、とにかく安価で汎用性が高いのが売りだ。国内はもとよりASEAN地域の4か国とアフリカのケニア、中央アジアのタジキスタンの計6か国から採用の引き合いがきている。

 JIPテクノサイエンスでは、長寿命化をはじめとする社会インフラの維持管理を“新領域”と位置づけ、重点的に伸ばしていく。同社は、NTTデータグループの日本電子計算(JIP)の主要子会社で、土木・建設業界向けの構造解析や、住宅業界向けソフト開発を手がけている。直近の“新領域”ビジネスは売上高全体の2割余りを占めるまで成長してきているが、向こう3年で同領域をさらに1.5倍に増やす方針だ。