ビジネスモデルのアップデート

 グローバル大手総合ベンダーのビジネスモデルは、近年、軒並み大きな変貌を遂げている。M&Aを含む事業の集約によりポートフォリオの網羅性を高めるベンダー、事業を売却・分割し、競争力のあるコア事業の成長を重視するベンダー、それぞれの思惑に従って各様の戦略を進めるなか、国産ベンダーの雄である富士通とNECが立つ現在地はどこなのか。両社の2016年度(17年3月期)決算からみえてきたのは、構造改革によるビジネスモデルのアップデートを成し遂げつつある富士通と、苦闘が続くNECの対照的な姿だ。(本多和幸、山下彰子)

富士通
収益構造の改善に道筋、17年度は過去最高益の計画

 富士通の16年度連結業績は、売上高が前年度比4.8%減の4兆5096億円、営業利益が6.8%増の1288億円で、減収したものの、増益を果たした。事業別にみると、同社の屋台骨を支えるSIは、好調だった前年度の売り上げを上回り、成長を継続した。一方で、ITインフラ・プラットフォーム向け製品やインフラサービスなどは、総じて円高傾向にあった為替の影響が大きく、減収になったという。ただし、円高はドル建てで購入したサーバーなどの部材の調達コストの削減にもつながり、増益の追い風になったかたちだ。
 
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富士通
田中達也
社長

 一見、地味な決算にもみえるが、決算会見に登場した富士通の田中達也社長は、ビジネスモデル変革への投資が実を結びつつあるという手ごたえを感じていることをうかがわせた。同社は4月28日に、カーナビなどを手がける富士通テンの株式の一部をデンソーに売却することを発表。富士通テンは富士通の連結子会社からデンソーの連結子会社に変わる。また、旧ニフティの事業再編も完了し、コンシューマ向け事業をノジマに売却、エンタープライズ向け事業を継承する富士通クラウドテクノロジーズが4月に発足した。さらに昨年11月には、主要SE子会社3社を吸収合併し、約1万4000人のシステムエンジニアを富士通本体に集め、3000人規模のデジタルビジネス専門部隊も立ち上げた。加えて、海外拠点の構造改革や国内のデータセンター再編、生産拠点再編などに取り組んできた。15年4月に就任した田中社長が、同10月に打ち出した経営戦略では、SIを含むテクノロジーソリューションに経営資源を集中して、高収益体質(営業利益率10%を目標に設定)に転換し、クラウド、ビッグデータ、IoT、AIなどによるデジタルビジネスに積極的に投資して成長を図るという方針を打ち出した。まさにそのための布石を着実に打ってきたといえそうだ。

 田中社長は、「16年度はビジネスモデル変革の2年目。いくつかの案件でかたちや質を変える取り組みを推進でき、変革の効果も出ている」と話す。15年度に415億円、16年度は447億円をビジネスモデル変革のために投資してきたが、塚野英博・取締役執行役員副社長兼CFOによれば、すでに「増益効果は3桁(100億円)」の水準になっているという。

 特筆すべきは、こうした16年度までの実績を受け、17年度の連結業績予想では意欲的な数字を打ち出したことだ。富士通テンが連結から外れたり、旧ニフティのコンシューマ事業売却などにより、売上高こそ4兆1000億円にとどまる計画だが、営業利益1850億円、最終当期利益は1450億円と、過去最高益の更新を目指すことを明らかにした。営業利益率は4.5%となり、「10%達成に向けた足がかりになる」(田中社長)と見込む。田中社長は、積み残した改革もあると気を緩めないものの、17年度の計画を達成できれば、デジタルビジネス自体に適合した高収益体質への転換がいよいよ軌道に乗るといえよう。

NEC
初年度でつまずいた中計、新計画策定を余儀なく

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NEC
新野 隆
社長兼CEO

 一方のNECは、苦しい1年を終えた。最新の「中期経営計画2018(16年~18年)」では、収益性、採算性の高い事業に絞ることで収益構造を立て直し、成長軌道に回帰することを目指した。だが、初年度が終わった新野隆代表取締役執行役員社長兼CEOは「中期経営計画1年目は非常に残念な結果になった」と苦しげだ。通期連結業績は、売上高が前年度比5.7%減の2兆6650億円、営業利益は54.2%減の418億円と減収減益の結果となり、厳しいスタートになった。売上高については、エンタープライズ向けビジネス以外の事業セグメントは軒並み減少。1月30日に大幅に下方修正した営業利益は、費用構造改革の改善ができたため予想値より118億円のプラスとなったが、テレコムキャリアやパブリックの減益が響き、トータルで前年比減益となった。

 具体的にみると、テレコムキャリアでは円高の影響で約230億円のマイナス、海洋システムの工期延期によるコスト増、システムプラットフォームではハードウェアの大型案件や企業ネットワークの受注減による売上収益の減少などが要因となった。また、海外向けの注力事業としてセーフティー事業、グローバルキャリア向けネットワーク事業、リテール向けITサービス事業の三つの事業の立ち上げを計画していたが、「実行力不足のため立ち上がりが遅れた」(新野社長)ことも大きな要因だ。さらに、公正取引委員会から3件にのぼる排除措置命令および課徴金納付命令を受けたことも追い打ちとなったという。

 この排除措置命令による指名停止は、17年度の業績見通しにも影響を及ぼしている。日本航空電子工業を16年度に連結子会社化したことで、17年度は売上高では1800億円、営業損益で70億円の上乗せを期待している。さらに、不採算案件の改善で90億円、構造改革費用の改善で60億円、偶発損失引当繰越などの改善で80億円と、計300億円の改善を見込んでいるが、指名停止の影響で売上収益で600億円の減少、営業利益で150億円の減少となる。このほか、構造改革費用や戦略投資の織り込みなどを含めると330億円の悪化の見通しで、中期経営計画2年目も計画未達となりそうだ。

 NECは中期経営計画2018の最終年度である18年度には営業利益1500億円を目標に掲げている。新たに始まった17年度は経営のスピードを上げ、戦略の策定から実行への落とし込みの迅速化を図るとするものの、前述の通り、業績不振は避けられそうにない。新野社長兼CEOは「このままの成長では(18年度に)1000億円は達成できそうなものの、1500億円の達成は難しい」とし、「新たな中期経営計画を検討、策定し、新たな成長戦略を含めて検討し直し、18年1月に新たな中期経営計画を発表する」とした。

 16年度を振り返り、中期経営計画そのものの見直しを余儀なくされた要因として、「マネジメントの実行力、スピード力の不足」「新規事業の遅れ」を挙げたNEC。こうした課題の解決を目指した新たな中期経営計画策定に年明けまでの時間をかけなければならない状況に、苦しさが滲む。収益構造の改善に向けて、正念場を迎えていることは間違いない。