「挫折させない」業務ソフトを追求してきた

 小規模事業者向けの業務ソフト「らくだシリーズ」「かるがるできるシリーズ」を開発・販売するBSLシステム研究所は、今年、設立25周年を迎えた。BCNランキングデータをもとにした独自調査では、給与計算部門で10度、販売・在庫管理部門で10度、低価格業務ソフト部門では7年連続で販売本数シェア1位を獲得している。業務ソフトベンダーとして確固たる地位を築いているようにみえる同社だが、クラウド会計の登場などで、市場にも大きな変化が起こりつつある。同社の来し方行く末をメインテーマに、小野秀幸社長にインタビューした。(取材・文/本多和幸)

設立時はPC通信教育教材が主力

―― 設立25周年を迎えた率直な感想を。
 
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小野秀幸
社長

小野 月並みだが、長いようでもあり、あっという間でもあった。仕事とはそういうものだろうが、何かに追われるままにやってきた感がある。

―― 創業はさらにさかのぼる。

小野 私自身は創業メンバーではないが、創業当初は少人数のスタッフでの受託開発をメインにしていた。それではなかなか成長できないということで、創業者が次の展開を考えたのが、1990年代の前半だった。93年にWindows 3.1が発売されることになって、それを機に、いろいろな企業にPCが普及していくと考え、通信教育の教材をつくって、その教育を生業にしたらどうだろうということになった。小さいメーカーでも、これなら商売を全国区に広げられるという期待もあった。そして、92年の11月に当社を設立したという流れだ。

―― いまや業務ソフトベンダーとしての地位を確立されていて、設立当初とはまったく違うビジネスが柱になっているが、何がターニングポイントになったのか。

小野 当初は、PC活用の教材自体が巷に少なかったので、値段はかなり高かったが売れた。しかし、Windows 95が発売されると、多くの人がそこにチャンスを見出して、いろいろな教材が市場に溢れるようになった。そこで、ビジネスモデルを変える必要があると考えた。

 その頃は私も当社に参画していたが、教材として、ベーシックなどのソフト開発、Microsoft Accessでのデータベース開発などを扱っていた。情報システム部門をもっているような企業は、(バックオフィスなどの)業務に使うソリューションを自分たちでつくりたいというニーズがあったので、それらが売れたという背景があった。一方で、私自身、ずっとIT畑にいた人間なので、いろいろな開発を通して現場のニーズを温めていた。情報システム部門がないような小規模な企業には、開発の必要がない業務ソフトパッケージそのものが売れると考えたのだ。潜在的な顧客数を考えても市場のポテンシャルは大きいということで、96年秋に業務ソフトの「らくだシリーズ」を発売した。

―― 成功できるという自信はあったのか。

小野 当時、現在も市場の雄である弥生さんやソリマチさんはすでに活躍されていた。後発でもあるし、彼らと同じ土俵で戦うのは難しいという思いはあった。そこで目をつけたのが、低価格で必要十分な機能を提供するというやり方だった。弥生さんもソリマチさんも、会計士や税理士が納得するような機能を網羅したオールマイティなソフトだったが、一般ユーザーからはハードルが高い部分があると感じられた。そこで、会計知識がそれほどない方でも挫折しないようなソフトを低価格で出したらいいんじゃないかと考えた。結果的に、現場のニーズに合ったものをうまく開発し、土俵を分けて勝負することができたと思う。

無償サポートが競争力の源泉

―― 先行する弥生やソリマチとの棲み分けを図ったという意味では、新しい市場を開拓しなければならない大変さもあったのでは。

小野 確かにそうだが、当社がビジネスを拡大するにあたって大きなポイントになったのが、ソフトに対する無期限の無料サポートを始めたことだった。他社ソフトは、年間の保守契約を有償で結ばないと操作説明も受けられなかった。また、それにプラスして、「挫折買取」という、文字通り使ってみて挫折したユーザーから製品を買い取る制度も始めた。これらの評価が口コミなどでも広がり、ユーザーも着実に増えていった。

―― その後のターニングポイントは。

小野 2002年に、さらに低価格の「かるがるシリーズ」を発売したことだ。通信教育事業も同じだったが、後発の安い製品が出てくる。もともと低価格の当社の製品が、相対的に高いものになってしまうという危惧があって、新興のさらに低価格の市場のシェアも取りたいと考えた。

 社内では、そんな低価格製品で利益が出るのか、既存のラインアップが売れなくなってしまうのではないかといった議論もあった。しかし、私としてはせっかく開拓した「低価格で誰でも使える製品」という市場を取られるのは嫌だという気持ちがあって、3800円のかるがるシリーズを発売する方向に舵を切った。当社の売りである無償サポートも変わらず提供することにした。

 これはやはり競争力があって、その年のうちにシェアはトップまで押し上げることができた。低価格業務ソフト市場では、7年連続ナンバーワンの売上本数を記録していて、8年目もいけるという手ごたえがある。また、既存のらくだシリーズとの棲み分けもうまくできている。

―― クラウド会計などが登場し、FinTechがトレンドになるなど、市場にも変化が起きてきている。

小野 われわれも変わらなければならないとは感じている。ただ、弥生やfreee、マネーフォワードのようなベンダーと同じかたちでビジネスをやることはできないし、その必要もないと思っている。

 BSLシステム研究所は、彼らのように株主などから成長に向けたハードな目標の達成という強いプレッシャーがかけられることはない。常に事業を長く続けることを基本に、お客様に寄り添うことを第一に考えてきた。ビジネスモデルは、時代に合ったものに徐々にアップデートしていくつもりだが、無償サポートの提供はその典型で、基本的な考え方はこれからも揺らぐことはない。