「IBM、マイクロソフトを超える」と馬雲会長

【杭州発】アリババグループ(馬雲会長)は、技術力で世界のリーディングカンパニーとなることを目指す。10月に開催した「2017 杭州・雲栖大会」で、新たな研究開発(R&D)プロジェクト「アリババ達摩院(Alibaba DAMO Academy)」を発表した。今後3年間で研究開発に1000億元(約1兆7000億円)超を投資。グローバルに実験室を設け、革新的な技術の発展につなげる。(上海支局 真鍋武)

 アリババ達摩院では、まず中国の北京・杭州、米国のカリフォルニア州サンマテオ、ワシントン州ベルニュー、ロシアのモスクワ、イスラエルのテルアビブ、シンガポールの7か所に実験室を設立。院長には、アリババグループの張建鋒・首席技術官(CTO)が就任する。世界各国から100人の科学者や研究員を引き入れ、ビッグデータ、IoT、FinTech、量子コンピューティング、人工知能(AI)などの分野で研究開発を推進する。

 企業や教育・研究機関とも連携。例えば、カリフォルニア大学バークレー校とはリアルタイムコンピューティングの分野で、中国科学院とは量子コンピューティングの分野で協力する。中国工程院の院士や、コロンビア大学、ハーバード大学などの著名な教授も達摩院に参画している。研究で得られた成果は、将来的にクラウドサービス「阿里雲(アリババクラウド)」を通じて企業に提供していく。
 
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馬雲
会長

 大会で基調講演した馬雲会長は、「今日の中国のリソース、中国の責任感、人材、資本をもってすれば、われわれは科学技術の領域で自らが歩む道を打ち出し、一流を創りだせるだろう。達摩院はインテル、マイクロソフト、IBMを必ず超えなければならない。21世紀に誕生したアリババには、後発優位性というチャンスがある」と述べた。10月10日には時価総額が一時、米アマゾンを上回るなど、グローバルで存在感を高めているアリババ。馬会長は技術力で世界のリーディングカンパニーを目指す方針を打ち出したことになる。同社は今年、「NASA計画」として、今後20年間で1億人の雇用を創出し、20億人の消費者に対してサービスを提供し、1000万の中小企業を支援するという壮大な目標を発表している。達摩院はその実現に向けた具体的なステップとなる。

 クラウドサービス「阿里雲」は、着実にグローバルIT大手との差を縮めてきている。米ガートナーによると、16年の世界パブリッククラウド(IaaS)市場で「阿里雲」はシェア3.0%を獲得し、米グーグルを超えて3位につけた。売上高の前年比成長率は126.5%で、上位5社のなかではもっとも業績を伸ばしている。「雲栖大会」で記者会見した阿里雲の胡曉明総裁は、「この3年間で、われわれのサービスは全面的にAWS(Amazon Web Services)を追い上げ、部分的なプロダクトはすでにAWSをリードしている」と述べ、自社の技術力に自信をみせた。15年にクラウド事業の海外展開を本格化させた際、AWSとの関係について「真っ向から競争するものではない」(喩思成 副総裁)との姿勢を示し、競合視を避けていたのとは対照的な発言だ。

 今年に入って、「阿里雲」はマレーシア、インドネシア、インドなど、新興国が多いアジア地域を中心にデータセンター(DC)の設立を進めている。アジア地域は、北米や日本などの先進国と比べ、パブリッククラウドの市場勢力図が確立されていないため、商機は大きい。今後数年間で、さらにアリババが勢力を拡大する可能性が高い。