東京のDRサイト、アジア成長市場のハブ拠点に

 沖縄データセンター(DC)の価格破壊が起こっている。キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、通信費込みで1ラック9万8000円からのメニューを投入。これは他の地方DCのおよそ半額に相当する安さだ。沖縄クロス・ヘッドは沖縄DCをメインサイトとして使えるような高スペックのサービスを拡充。高スペックを用意できたのもベースとなる通信費の低価格化によるところが大きい。沖縄県主導で東京と沖縄を結ぶ海底ケーブルが整備され、これによって他の地方DCとの通信費の価格差が大幅に縮小。低価格帯から高価格帯までサービスラインアップが充実してきたことで、沖縄DCビジネスの一層の活性化が期待される。(安藤章司)

「ようやく同じ土俵で
ビジネスができる」

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沖縄クロス・ヘッド
渡嘉敷唯昭社長

 沖縄は早くからDCビジネスに取り組んでいる地域であり、沖縄本島の南部、中部、北部の全エリアでDCの整備が進んでいる。しかし、地方DCの活用を進める首都圏のユーザー企業にとって、東京と沖縄の割高な通信費が長年の課題だった。そこで沖縄県は、県主導で東京との海底ケーブルの整備を推進。これにより、通信費が大幅にダウンした。地方DCビジネスを展開するうえでライバルとなる北九州や北海道のDCと、「ようやく同じ土俵でビジネスができるようになった」(沖縄クロス・ヘッドの渡嘉敷唯昭社長)と状況が大きく変わった。

 海底ケーブルの名称は「沖縄国際情報通信ネットワーク」で、東京、沖縄、香港、シンガポールを結ぶ。通信費は、1年ほど前に比べて東京、沖縄間でざっくり10分の1、沖縄、香港・シンガポール間で半額に下がった。さらに通信速度が毎秒100メガビット台から一気に10ギガビットと100倍近く速くなった。これに沖縄の充実したDC設備を組み合わせれば、DR(災害復旧)用の安価なバックアップサイトではなく、本格的な本番サイトとして沖縄DCを活用することも可能になる。
 
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高スペックDCで
日本・アジアの拠点に

 那覇市に本社を置く沖縄クロス・ヘッドは、首都圏ユーザーの本番サイトとして運用できる高品質なDCサービスを沖縄で提供することを重視。サーバー設備の遠隔管理システム「OCH POWER」を独自に開発し、東京にいながらにしてサーバーを自在に管理できるようにした。障害発生時はOCH POWERの操作パネルを通じて沖縄クロス・ヘッドの技術者に指示を出す機能も実装。この仕組みを沖縄クロス・ヘッドが運営する香港DCと、2018年夏に新設予定のシンガポールDCにも適用する。沖縄という立地を生かし、「アジア成長市場に進出する日系企業の拠点DCサイトとしても期待している」(渡嘉敷社長)。安さを追求するのではなく、本番サイト向けの充実した設備とアジアのハブDCとして位置づけることで、他の地方DCとの差異化を図る。

 さらに日本インターネットエクスチェンジ(JPIX)と協業して、沖縄で初めてインターネットエクスチェンジ(IX)サービスをこの夏からスタートした。IX開設によって首都圏IXに直接接続することが可能になり、例えば沖縄DCとAWSやAzureといったパブリッククラウドとのシームレスな運用も一段とやりやすくなる。沖縄県内の企業にとっても、地元のDCとパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドを構築しやすいというメリットがある。

 情報セキュリティ面では、JBCCホールディングスグループが手がけるSOC(セキュリティ運用センター)サービスと、沖縄クロス・ヘッドのOCH POWERと組み合わせて、24時間体制での監視サービスを確立させた。

 こうした取り組みによって、来年度(19年3月期)はDC関連事業の売上高を前年度比で3、4割増やすとしている。

価格破壊の先陣を切る
「9万8000円」

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キヤノンITS
寺本幸司チーフ

 キヤノンITSは、安くなった通信回線をフルに活用して、ラックあたり月額9万8000円からのメニューを打ち出した。ベストエフォート型の毎秒1ギガビットの回線込みで、電源は2kVAから。地方DCでライバルとなるのは、首都圏と同時被災の可能性が低い北海道、北九州など。今年10月から始めたこのサービスは、「ライバルの半額となる“月額9万8000円ありき”で設計した」(寺本幸司・ITサービス営業部営業一課チーフ)と、まずは沖縄DCは割高というイメージを払拭するインパクトを優先した。

 国内最大のDC需要地は首都圏であり、地方DCは同時被災しない地理的メリットを前面に出して受注している。震災で首都圏が機能不全に陥ってもサービスを継続できるメリットは大きいものの、一方で「首都圏より価格が少しでも高いと、まず売れない」(関係者)という厳しい現実も横たわる。地方DCは安さも重要な要素であり、これまで沖縄DCは北海道や北九州などのDCに勝てなかった。沖縄DCのほぼ唯一のボトルネックだった価格を、通信費込み9万8000円によって打ち壊した意義は大きい。

 沖縄と東京に自社グループ所有のDCを運営するキヤノンITSは、東京と沖縄のDCをセットで販売する相乗効果も見込んでいる。首都圏DCのユーザーは、DRやBCP(事業継続対策)で同時に被災しないバックアップサイトをもう一つ契約するケースが多い。同社では、東京DCのユーザーを対象に、100ギガバイト当たり月額定額で、沖縄DCにデータを自動的にバックアップするサービスを来年早々に始める準備を進める。こうした取り組みによって沖縄DCではまずは新規100社からの受注を目指す。