市場に深く浸透するキーワードは、ITビジネスの活性化を後押しする。2017年の例でいえば、「働き方改革」は、業務アプリケーションからインフラ製品まで、あらゆるレイヤでビジネスの成長を促進した。新春恒例企画として、週刊BCNの記者陣が現在のITのトレンドを分析し、18年、「流行らせたいキーワード」をひねり出したので、ご覧あれ。
(『週刊BCN』編集部)

KEY WORD 1
AIoT

 地域を示す「Area」とIoTを組み合わせた造語。18年はIoTが本格的に広がっていくとの見通しがあるなか、地域全体がつながる仕組みとして広がる可能性がある。人工知能(AI)とIoTを組み合わせた言葉ではない。

 地方では、中小企業が中心となって、IoTに取り組む流れがある。町工場の機械にセンサをつけて生産状況や稼働状況を把握したり、農業の生産環境を把握したりと、活用例はさまざまだ。

 少子高齢化による労働力の減少など、地方を取り巻く環境は、将来的にますます厳しくなっていくといわれている。地方の中小企業のなかには、新卒の採用がままならないという事態も起こっており、危機感は募るばかりだ。

IoT向けに注目されているLPWAのほか、データを蓄積するクラウドなど、IoTを導入するための環境は整いつつある。18年は、地域全体でデータやノウハウを共有し、新たな価値を生み出す動きが登場するかもしれない。
 

KEY WORD 2
QIer

 システム開発を担うSIer(システムインテグレータ)に始まり、クラウドを主戦場とするCIer(クラウドインテグレータ)、AI(人工知能)の実装を推進するAIer、そして量子コンピュータ(Quantum Computer)上でのシステム開発を担うのが、QIerである。

 量子コンピュータの実用化が進み、並行して開発環境が整えられ始めている。製品化で先行したカナダのD-Wave Systems、ゲート方式の量子コンピュータを無償開放したIBMは、量子コンピュータを活用するための開発環境の提供を始めている。まだ量子コンピュータを公開していないマイクロソフトも、開発キットをリリース。「量子ニューラルネットワーク(QNN)」を開発したNTTを中心とするグループは、QNNの無償開放時に開発環境を提供するとしている。いよいよ量子コンピュータを活用したシステムの開発競争が始まりそうだ。
 

KEY WORD 3
プレミアムクラウデー

 働き方改革の一環として推進されたプレミアムフライデー。月末の金曜日は忙しいと不評で、定着に至っていない。

 そうしたなかで、せめて早めにオフィスを出ることから始めようとの呼びかけで始まると予想される取り組みが「プレミアムクラウデー」。クラウドを活用すれば、どこでも仕事ができるとするプレミアムフライデーの第二弾。そもそもクラウド環境を整えれば、どこにいても仕事ができるが、顔を合わせたほうがスムーズに進むことが多い。そこで、せめて月に1日だけでもクラウドをフル活用する機会を用意するというのが、プレミアムクラウデーとなる。

 IT業界としては、クラウド化が進展することから、働き方改革の新たな波として、特需を期待したいところだ。
 

KEY WORD 4
ERPA

 ERP+RPAの造語。ERPパッケージを扱うSIerやコンサルティングファームは、RPAを組み合わせたソリューション提供をサービスメニュー化する動きが目立ってきている。ERPは企業の基幹業務プロセスの改善に寄与してきたが、パッケージ導入後も、データ編集やERPへのデータの入出力、システム間をまたぐ処理、ユーザーごとの独自性の高い定型業務など、パッケージでカバーできない作業が残ってしまっているのが実情。こうした業務は属人化しやすく、システム化して対応する場合も、高額な開発費用をかけてアドオン/カスタマイズを施す必要があるという課題があった。17年は、これをRPAで解決していこうというトレンドが顕在化し、サービスメニューが整ってきた感がある。18年は、「ERPA」として両者の組み合わせパッケージが一つのジャンルとして確立されれば、普及が飛躍的に進むのではないか。ERP・基幹業務ソフトベンダー自身がRPAソリューションを用意したり、簡易的な判断業務の自動化までRPAの適用領域を広げる動きもみられるようになっており、市場拡大への期待は大きい。
 

KEY WORD 5
脱ポイント運用

 巧妙化するサイバー攻撃に対して身を守るために、ネットワークからエンドポイントまで複数の対策を用意する「多層防御」を行うことの必要性が叫ばれるようになって久しい。だが、ポイントごとに異なるメーカー製品を導入すると、各製品が独立して動くため、セキュリティ対策としてのレベルは向上しても、運用に手が回らなくなる可能性がある。

 こうした背景から、製品どうしを連携させることで、互いに情報をやり取りして協調的に動作し、運用を効率化する「脱ポイント運用」が加速する。

 例えば、HPE Arubaは昨年12月、グローバル100社以上のセキュリティソリューションと連携する「Aruba 360 Secure Fabric」を発表した。各レイヤで多様な製品をもつ大手ベンダーは、自社製品の統合的な連携を可能にして提供する一方、ポイントソリューションを提供するベンダーは、より多くの他社製品と連携を実現しようとするだろう。
 

KEY WORD 6
SD企業

 ソフトウェアで定義し、制御するソフトウェアデファインド(SD)。最初はネットワーク(SDN)領域から火がつき、今はあらゆるものをソフトウェアで制御する「SDx」の時代だといわれ、専用のハードウェアが縮小傾向にある。キーワードの「SD企業」とは、SDxの流れのなかで、企業/団体(=エンタープライズ)そのものがソフトウェアで定義づけられ、制御されることを指す。

 AI(人工知能)やロボット(RPA)による業務の自動化、ビッグデータ分析による需給予測、さらには企業間連携や顧客接点もオンライン化が著しい。企業が何らかのアクションを起こすときは、まずソフトウェアを書き換えることから始まる。見方を変えれば、ソフトウェアの変更によって、業務やサービスの内容を柔軟に変えられること意味する。SD化によって、企業経営のスピードが加速し、変化適応の能力も大幅に高まることが期待されている。
 

KEY WORD 7
共有社会5.0

 「共有社会5.0」とは共有経済(シェアリングエコノミー)と、国が推進するSociety 5.0を組み合わせた造語。共有経済は、中国で57兆円(取引総額ベース)規模に拡大しており、20年には220兆円に達するとみられている。いわゆる「成長国型」の共有経済モデルの成功例と評される。一方、Society 5.0は仮想と現実を高度に融合させ、経済発展はもとより、少子高齢化など日本が抱える社会的課題の解決の両立を狙う野心的な政策である。

 Society 5.0で描く社会へと転換させるには、日本に馴じむ「共有社会5.0」の考えを取り入れていくことが欠かせない。個人間の直接取引(C2C)、企業/団体間の取引(B2B)、さらにはあらゆる個人や団体が参加するN2Nのモデルを実現。共有社会5.0のプラットフォーム上で、場所や時間、所属にとらわれることなく、自由で柔軟性に富んだ経済活動を創出することが可能になる。
 

KEY WORD 8
IoS(Internet of Services)

 「IoT」がモノとモノがつながる世界ならば、「IoS」はサービスとサービスがつながる世界。APIエコノミーの拡大などによって、いま以上にクラウドサービス同士がシームレスにつながる世界が一般的になる可能性は高い。

 現在でも、TwitterとFacebookなどによるSNS連携やポイントカード連携などが存在するが、分け隔てなく連携できる世界になることで、ユーザーは自分に適したサービスを自身で簡単につくって、利用できるようになる。

 法人向けにおいてもIoSが主流となり、ユーザー企業がサービスを組み合わせて自社に適したものに仕上げたり、SIerなどがサービスを簡単に組み合わせて多くの独自ソリューションを揃えたりするようになる。なお、このような世界になった際、新しい販売代理店契約やパートナーシップが必要となり、ITベンダーによるビジネスモデルも変化することになる。