S/4HANAの移行ニーズを基幹特化型IaaSで取り込む

 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、基幹業務システムに特化した独自のクラウド(IaaS)サービス「CUVICmc2(キュービックエムシーツー)」をスタートさせてからおよそ1年半。直近の累計受注件数は20社/22件に達し、「予想を上回る勢いでビジネスが伸びている」と手応えを感じている。なかでも、SAPの最新バージョンのERP「S/4HANA(エスフォー・ハナ)」に乗り換えるユーザーからの受注が相次ぐ。今後、本格化していくことが期待されるS/4HANAへの移行商戦で、CTCは一歩リードした格好だ。(安藤章司)

 基幹業務システムに特化したIaaSの「CUVICmc2」は、ERPと親和性が高い米Virtustream(バーチャストリーム)の技術を採用しており、受注の多くをSAPが占める。インメモリ・データベースであるHANAを実装した最新のERP「S/4HANA」のプラットフォームとして選ばれた割合は、累計22件の受注数のうち、実に半分余りの12件に達している。CTCの藤岡良樹・執行役員クラウド・セキュリティサービス本部本部長は、「S/4HANAの国内最大級のクラウドプラットフォームサービスになりつつある」と胸を張る。

 CTCのCUVICmc2は、SAP専用のIaaSではない。だが、結果的に現行バージョンのサポート切れに伴うS/4HANAへの移行需要も後押しするかたちでSAP比率が高いという。SAPの現行バージョンのサポート切れは2025年頃とみられており、20年前後から本格的な移行時期に入るとCTCでは予想している。CUVICmc2でS/4HANAの案件を多く獲得できたことで、いわば“HANA商戦”の前哨戦でリードしたかたちになっている。

 S/4HANAは、ビッグデータ分析やIoTといったデジタルビジネスを幅広くカバーできる点が、従来のERP製品と大きく異なる。このため、IT基盤も従来のオンプレミス型ではなく、柔軟性にすぐれたクラウド型を選ぶユーザーが増えている。クラウド型であるCUVICmc2は、こうしたユーザーニーズをうまく先取りできたことが受注増につながった。順調に受注が進んでいけば、来年度(19年3月期)にはCUVICmc2関連事業の単年度黒字化、20年3月期には累損解消、累計受注社数100社を射程距離内に入れている。

 CTCでは、ビッグデータ分析に強いブレインパッド(佐藤清之輔社長)と組んで、データ分析サービスをCUVICmc2上でスタート。分析ツールにはSAPのBusinessObjects(ビジネスオブジェクツ)を採用し、S/4HANAなどSAPユーザーと親和性の高いデジタルビジネス支援の強化に取り組む。

 また、CTCは17年11月に、Amazon Web Services(AWS)の最上位認定パートナーである「AWSプレミアコンサルティングパートナー」の資格を取得。AWS基盤を活用したCTC独自のクラウドサービス「CUVIC on AWS」の拡充にも力を入れる。アマゾンウェブサービスジャパンでは、基幹系システムのAWSへの誘致に力を入れており、住友化学のS/4HANAのAWSへの移行などすでに実績も出始めている。

 CTCとしては、CUVICmc2とCUVIC on AWSの両方をユーザーに提示することで、「ユーザーの要件に合った最適なクラウド基盤を選べるようにしている」(藤岡執行役員)。実際には、どちらかの択一ではなく、基幹業務部分はCUVICmc2、AIやIoTなどはAWSのPaaS/SaaSに相当する各種サービスを活用するなど、ハイブリッド型になるケースが増える見込み。どのような組み合わせでも柔軟に対応していくことで、ユーザー満足度を高めて基幹系システム関連ビジネスの一段の活性化につなげる。