9月12日、iOSの「App Store」およびmacOSの「Mac App Store」から、トレンドマイクロが提供しているアプリが一斉に姿を消した。9月26日現在、アプリが公開停止となった原因は公式には案内されておらず、公開再開時期も不明。しかし同時期、同社の一部アプリがユーザーのブラウザー履歴を取得していたことが発覚しており、関連が疑われている。(日高 彰)
公開停止となったのは、セキュリティーソフトやユーティリティーソフトなど、トレンドマイクロがiOSおよびmacOSの両ストアを通じて提供していた全てのアプリ。すでにインストール済みのアプリは継続利用できるが、新規導入やアップデートは行えない。ほとんどは個人向けのアプリだが、端末の遠隔ロックやポリシー管理を行う企業向けのMDM(モバイルデバイス管理)ツール「Trend Micro Mobile Security」も影響を受けており、同製品を採用している企業では、新規のiOSデバイスを管理できない状況になっている。
iPhoneやiPadなどのiOSデバイスは、アプリの配布経路としてApp Storeに依存せざるを得ない。そのため今回のような事態が発生すると、個人向け/法人向けを問わず、iOSをターゲットにしたビジネス全体に影響する大きな問題につながる。
Mac App Storeからもトレンドマイクロの製品が消えた
ストアで公開されているアプリはアップルの審査を経ており、マルウェアを含まないことは確認済みのはずだった。しかし今年8月、Mac App Store上に、ウェブブラウザーの閲覧履歴を取得し、外部に送信するアプリが存在することが、セキュリティー技術者などの指摘で明らかとなった。そして、トレンドマイクロ製アプリの一部も同様の情報取得を行っていたことが発覚(取得期間と送信先は前述のアプリとは別)。この問題に対するペナルティーとして、macOS向けのみならず、iOSからも同社製品が消えた可能性が考えられる。
トレンドマイクロ製品が表示されないApp Store(9月26日)
トレンドマイクロ米国法人のブログでは、ブラウザー履歴を取得していた理由について、複数のソフトでコードライブラリーを共用していたためと説明。セキュリティー目的で情報を取得する機能が他のユーティリティーソフトにも混入し、意図しない動作になったとしている。
このようなトラブルは、開発の一部を外部へ委託する場合には発生する恐れが一層高まる。8月には、デンソーウェーブとアララが共同開発したQRコード読取りアプリ「公式QRコードリーダー“Q”」が、コードを読み取った場所のGPS情報を送信していたとして問題となった。位置情報取得機能はアララ側の開発だったが、アプリが「公式」を冠していたことから、デンソーウェーブにも非難が寄せられた。あらゆるソフトウェアのパブリッシャーは、自社開発/委託を問わず、製品に法令や規約類への抵触がないか、公開に値する品質かの検証プロセスを、あらためて確認すべきだろう。