富士通子会社の富士通北陸システムズ(FJH、寺田満明社長)は、AIを活用して業務効率化などを大幅に図る“業種AI”と呼ぶソフト製品の開発に力を入れ始めている。ソフトウェアプロダクト開発とアプリケーション開発、システム基盤構築の3事業部門の得意技を融合して作り上げるもので、手始めに介護保険業務の適正化にAIを活用する。次世代の成長エンジンに育てる。

 1983年に設立した同社は、OSSの実用化やAI、ブロックチェーン、ロボティクスなど先端技術を生かしたソフトプロダクトの開発、北陸3県の顧客らのアプリ開発支援、国内有数のOracle DBの技術者数を生かしたシステム基盤構築ビジネスを柱に成長してきた。

 しかし、数年前から売り上げが180億円前後で伸び悩み始めた。「何か特徴が必要」と判断した寺田社長は、先端技術を駆使した業種・業務向けシステムなどの検討を指示した。その中で生まれたのが、介護保険業務の適正化へのAI活用だ。介護サービス事業者から自治体に送られてくる介護給付費請求内容の検査業務などを効率化できると考えたという。

 要介護認定者や介護施設の増加によって請求内容の分析や指導業務が増大する中で、過誤や不正請求の検査効率化は喫緊の課題になっている。FJHと富士通は東京都北区で2018年1月から3月まで実証実験を行い、同区の介護保険システムに蓄積された介護給付費請求データなどを機械学習し、請求内容が適正であるかを分析するモデルを構築して有効性を検証した。現在、この知見を生かして富士通の業種本部が商品化を進めている。また、この介護保険請求の応用として、医療機関向けに健康保険組合などへの医療費請求内容を事前チェックするシステムの開発も始めた。

 FJHは今後、こうした業種AIの品揃えを拡充していく計画だ。同社はHadoopなどのOSSや認証・暗号化といったセキュリティー技術に長けた技術者を数多く抱えている。そして、従業員の約8割は地元の石川県や富山県の出身で、「地元から離れたくない従業員は少なくない」(寺田社長)という。こうした地元志向の人材をフル活用し、PoCフェーズを超えて、売れる業種AIを取り揃えるビジネスモデルを確立する。SE子会社の再編が進む富士通グループの中で、FJHの存在価値を確固たるものにしたいとの思惑がある。(田中克己=IT産業ジャーナリスト)