NTTデータの本間洋社長は、来年度から実質スタートするグローバル第三ステージに向けて、海外ビジネスの一段の拡大に向けて強い意欲を示した。グローバル第三ステージでは、海外売上高のうち北米とEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)/中南米をそれぞれ30%、日本/アジア太平洋(中国・ASEAN・豪州)で40%の構成比を念頭に置く。これを実現するには連結売上高を2兆5000億円~3兆円に増やしていく必要があるとみている。北米市場のテコ入れやNTTグループ海外事業の再編による相乗効果が、海外事業を伸ばすためのカギを握る。(安藤章司)
北米テコ入れとNTT海外再編を追い風に
北米での売り上げシェア拡大が課題
NTTデータは、海外売上高比率50%を目標に据えたグローバル第二ステージが大詰めを迎えている。昨年度(2018年3月期)実績では、北米とEMEA/中南米を中心とする海外売上高比率が40%を超える水準まできている。今年度(19年3月期)は、アジア太平洋の売り上げも含めて、グローバル第二ステージの目標値に近いところに着地できる見通し。
来年度からはNTTデータの海外事業のグローバル第三ステージへの移行を本格化させる。ポイントは、海外でSIer上位グループに食い込み、海外の有力顧客からNTTデータが「世界の主要SIerの1社である」とより強く認知してもらうことだ。スペインやイタリア、トルコ、チリなどEMEA/中南米でNTTデータの存在感は大きいが、北米ではまだ弱い。これはNTTデータが海外SIerのM&A(企業の合併と買収)を本格化させた07年当初、主に欧州の有力SIerをグループ傘下に収めたことが背景にある。
本間洋
代表取締役社長
北米では、デルの旧サービス部門(現NTTデータサービシーズ)を16年末にグループに迎え入れたことで一気に事業規模が拡大。しかし、北米の企業向けIT市場は大きく、その中でのNTTデータのシェアは1%程度と小さい。ここをいかに伸ばしていくのかが、今後の大きな課題となる。直近の第2四半期での北米の売上高は、前年同期比4.7%減と苦戦。NTTデータサービシーズが米医療保険会社と7年間で総額2億ドルを超える大型受注を決めるなど、「受注が回復している」(本間社長)としているが、抜本的な拡大策が求められている。
事業規模の拡大によって、海外で「主要SIer」だと認知してもらうことは、大規模案件の受注につながる。NTTデータでは日本円で年間50億円以上、海外では5000万ドル以上の受注がある顧客数が、昨年度は国内外で65社あった。グローバル第三ステージでは、これを100社へと増やすイメージを描く。
「マルチキャリア」ニーズにも配慮
19年はNTTグループの海外事業再編による相乗効果の一段の増強が期待できる。NTTグループは19年7月をめどに、NTTコミュニケーションズとディメンションデータなどを統合・再編する形で、新しく海外事業会社と国内事業会社を発足させる。海外事業会社は、NTTグループの海外事業を統括する中間持ち株会社の下に置かれ、NTTデータの海外事業と横並びになる予定だ。
海外では、これまでもNTTデータとNTTコム、ディメンションデータが協業して受注活動を展開していたが、各社の商品名やサービスブランドがそろっておらず、「顧客から見て分かりにくい」状態だった。海外事業会社を集約することで連携の窓口が一本化されるとともに、海外事業を統括する中間持ち株会社の調整機能が加わることで、商品やサービスの整合性を高めたり、よりスムーズな連携が可能になるなどの効果が見込まれている。
本間社長は、「NTTデータの業務アプリケーションの構築能力に加え、クラウドやネットワーク構築の総合力を生かせる」とみている。一方で、複数の通信キャリアを競わせて、一番コストパフォーマンスが良いキャリアを選ぶ「マルチキャリア」の顧客ニーズに応えるため、NTTデータはこれまでの経営形態を維持。マルチキャリアにも対応していくなどの顧客配慮も見え隠れする。
NTTグループは、23年度をめどに海外売上高を直近の2兆2000億円から2兆7500億円、営業利益率7%に増やす目標を掲げる。NTTデータのグローバル第三ステージの完了は、25年頃を念頭に連結売上高ベースで今期見通しの2兆1000億円から2兆5000億円~3兆円に伸ばし、うち海外の北米とEMEA/中南米で6割を稼ぐとすれば、ざっと1兆5000億円~1兆8000億円。これにアジア太平洋の売り上げが加わる。本間社長は、「既存事業の成長と新規M&Aの組み合わせ」によって、NTTグループの海外事業の成長を引っ張っていく考えだ。