【バンコク発】米アバイアは2月26日から27日、APACのパートナー向けに自社の方針を共有するカンファレンス「Avaya Partner Summit 2019」をタイ・バンコクで開催した。2017年、米国における日本の民事再生法にあたるチャプター11を申請し新たな一歩を踏み出した米アバイア。同社が圧倒的なプレゼンスを発揮してきたコンタクトセンター市場にも変化が訪れている。アマゾン ウェブ サービスの「Amazon Connect」やジェネシスといった新たなプレーヤーが参入し競争が激化する今、世界各国から集まった300人以上のパートナー達に向けて示したキーワードは「エコシステム」と「クラウド」だった。(取材・文/銭 君毅)

パートナーエコシステムで
不断の成長を目指す


 2018年、米アバイアの主戦場であるコンタクトセンター(CC)とユニファイドコミュニケーション(UC)の市場はクラウド化が進んだ。同社の収益のうち80%はSaaSによるもので、クラウド事業は前年対比300%の成長を遂げた。カンファレンスで登壇したニダル・アブリテフ・バイスプレジデントは数字を示した上で、アバイアを取り巻く現状に言及した。「この市場は大きく変化している。AI、知能、自動化を通して、より競争力を高めなくてはならない」。新たなテクノロジーやデバイスが生まれる中、コンタクトセンターの老舗ともいえる同社としても常に変化していく必要があるのだという。そのため、18年は、自社のコア技術に対して積極的な投資を行ってきた。その投資額は1億5000万ドルに上る。また、積極的にパートナープログラムを拡充することでエコシステム全体で成長する方針を明らかにしている。これは技術開発においても同様で、18年のアバイアの開発パートナープログラムである「Avaya DevConnect」のパートナー規模は10万社に到達した。今後も、エコシステムの拡大には精力的に取り組む方針だ。
 
ニダル・アブリテフ・バイスプレジデント

 その施策の一つとして今回紹介されたのが「Avaya & Friends」である。もともと同社が持つパートナープログラムは販売、開発、AIテクノロジーのカテゴリーがあった。これらを包括的に推進するプログラムがAvaya & Friendsであり、主に同社が持つソリューションやAPI・SDK、その他のパートナーとのつながりを提供し、エコシステムの密度を高める。ファディ・ムバラク・バイスプレジデントは「並外れた顧客体験を生むためのユニークなソリューションを届けることができる」と強調する。
 
ファディ・ムバラク・バイスプレジデント

 同社の協業では、特にAPIにおいて16年にLINEと連携するなど取り組みを活発化。そして、今回新たに発表されたのが、グローバルでも代表的なメッセージングツール「WhatsApp」のAPIである。世界最大規模の利用者を誇る接点をカバーしたことでアバイアのUCは新たな段階を迎えたと言える。エコシステムの拡大により、継続的な成長を実現する体制が完成しつつある。

プライベートクラウドで
拡張性とセキュリティーを担保


 多くのクラウド型コンタクトセンターソリューションが参入しており、アバイアにとっても“クラウド化”は大きな課題となっている。ムバラク・バイスプレジデントは講演の中で現在提供している「Avaya OneCloud」の概況を説明。「世界の市場においてSaaS型のCC、UCのニーズは継続して増えている」と語る。特にCCの売り上げではプライベートクラウドとハイブリットクラウドが8割を占めているという。

 このことから、同社は19年の1月にプライベートクラウド向けソリューションの「Avaya OneCloud ReadyNow」を発表した。新興ベンダーに対して拡張性やカスタマイズの選択肢の豊富さ、セキュリティーの観点から差別化していく戦略をとる。既存のオンプレミスソリューションを持つユーザーがクラウド化を忌避する理由を排除したことで、競合他社への流出を防ぐことにもつながる。同サービスでは日本を含む34カ国で利用が可能で、移行支援サービスについても取り扱う。現時点で、日本にデータセンターはないものの、順次拡張していき、各国のニーズに応えていく方針だという。同社の戦略についてアブリテフ・バイスプレジデントは「あくまでもお客様のニーズに応えているだけであって、競合のことは考えていない」としているが、同社の動きはクラウドファーストの新興競合他社に対して大きなプレッシャーをかけることになるだろう。
 

パートナーアワードで日本企業が受賞

 イベントの最後に、APACにおいて特に大きな貢献を果たしたパートナーを選出し表彰する「Avaya Partner Award」が開催され、日本企業3社を含む10のパートナー企業が表彰された。

 まず「Ent Cloud Partner of the Year-APAC」として輝いたのはSCSK。担当者は、「いまだに多くの業界でオンプレ型のコールセンターが残っている。アバイアとともにクラウド化を支援していきたい」と語った。

 続いて、「A.I Partner of the Year-APAC」として選出されたのが丸紅情報システムズ。同社はGoogle Cloud Platformのマシンラーニングエンジンを利用した音声認識技術をコールセンター向けに提供してきた。今後はアバイアとの事業の売上を引き上げつつ、音声認識の付加価値によってさらなる成長を図る方針だ。

 そして最後に、APACにおいて最も収益を上げた「Partner of the Year-APAC」となったのが三井情報だ。大企業のリプレースのタイミングで大きな案件を複数受注できたことが要因となったという。担当者は「今後、いわゆる伝統的なコールセンターは縮小していくのは確実。だからこそ技術革新の中で常に変わっていかなければいけない。10年以上に及ぶアバイアとの信頼関係をより深めながら一緒に進化していきたい」と意気込みを語った。