アドビシステムズの「Adobe Document Cloud」事業が成長を遂げている。他社サービスとの連携を重視したパートナーエコシステムの整備で大きな付加価値の提供につなげており、最近ではサイボウズの「kintone」をはじめ、パートナーによるSI連携ソリューションを強化。ソリューションパートナーによるエコシステムを充実させつつ、エンタープライズと個人利用の両面からユーザーを拡大していく考えだ。

マーク・グリリ バイスプレジデント

 グローバルでAdobe Document Cloudのプロダクトマーケティングを統括するマーク・グリリ バイスプレジデントは「もともと日本は、PDFを活用するニーズが強いマーケットだ」と指摘。海外でもビジネスを展開する企業を中心にPDFをベースにしたやり取りが行われてきたこともあり、現在まで着実に成長してきたという。近年ではERPやCRM、オンラインストレージなど主要な外部サービスの連携先を増やし、ソリューションの適用範囲を拡大。直近では18年11月からサイボウズの「オフィシャル アライアンス パートナー」のコントラクトマネジメントを通じて、kintoneと電子署名機能「Adobe Sign」の自動連携ソリューションを提供している。Adobe Signの外部連携を強化したことで、社内外の文書・契約書などのやり取りで潤滑油のような役割を果たすようになっており、企業間・システム間の溝を埋めるソリューションへと進化しつつある。

 一方、ビジネス市場全体のペーパーレス化という観点では、日本はいまだ紙文化が根強い。この状況に対してグリリ バイスプレジデントは「慣れ親しんだやり方を変えるのはそう簡単なことではない」と理解を示しつつ、打破するためには「象徴的なユースケースを紹介し、各企業の課題に沿ったPoCでメリットを体験してもらうことが重要になる」と語る。Adobe Document Cloudの導入が紙の保管スペースやコストの削減につながるだけでなく、エンドユーザーや取引先が導入企業と接したときの体験をより良いものにするソリューションであることを強く押し出していく考えだ。

 最近の事例では、Adobe Signの導入企業であるソニー銀行が2019年5月、住宅ローンの「電子契約サービス」を開始した。これまで2~3週間かかっていた契約書のやり取りを最短1時間程度まで削減し、これまでエンドユーザーが負担していた実印や印紙代、印鑑証明書などを用意する手間を省いている。グリリ バイスプレジデントは「電子手続きができるかどうかは、エンドユーザーにとってサービスを選ぶ基準になりうる。Adobe Signの導入は競争優位性につながる」と強調する。

 今後についてグリリ バイスプレジデントは「大企業のデジタル化をお手伝いしつつ、個人の業務効率化を支援していく」と話す。一方で中堅・中小に関してはすでに強力な販売網を構築しており、これを基に拡販を進めていく構え。「われわれは、汎用的なサービスから業界特化のサービスまでさまざまなベンダーと組んでおり、製品はより埋め込みやすく統合しやすくなっている。チャネルパートナーも積極的に増やし、われわれではリーチしづらいSMB層にアプローチしたい」と意気込む。特にコントラクトマネジメントのように独自ソリューションを持つパートナーと組んでいきたい考えだ。(銭 君毅)