日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)の会長にソフトクリエイトホールディングスの林宗治社長が就任してから約5カ月が経った。JCSSAは主に法人向けIT商材の間接販売を担う企業から成る業界団体として活動してきたが、クラウドの登場などを背景にITビジネスの形が大きく変わる中で、会員企業が必ずしもその変化に適応できていないという課題を抱える。林会長は「ある日、市場から一斉に販売店はもう必要ないと言われたとしてもおかしくない」という危機感の下、IT販売を進化させるための“インフラ”づくりに取り組む方針だ。(本多和幸)
協会の歴史上2回目の大変革期を迎えた
JCSSAは、もともとコンシューマー向けのパソコンショップなどが中心となって立ち上げた業界団体だ。大手家電量販店がコンシューマー向けPC販売に本格的に乗り出した頃から会員の業態が急激に変化し、やがて法人向けIT商材の販売を担う企業のための業界団体に変化したという経緯がある。林会長はJCSSAの歴史を踏まえ、「クラウドやサブスクリプション型ビジネスの浸透により、現在は2回目の大変革期に突入している」と見る。
林会長は会長就任前から“クラウド販売”にどう対応していくかが販売店業界の命脈を握るという問題意識を持ち、クラウド販売委員会を立ち上げるなど、会員間の情報共有を促進してきた。会長就任後はさらに一歩踏み込み、「クラウド販売のためのインフラ整備を協会の重要な役割と位置付けた」という。
林 宗治会長
“クラウドの作法”の業界標準をつくる
具体的には、「クラウドビジネスのステークホルダーであるクラウドサービスベンダー、販売店、エンドユーザー間で責任範囲をどこで切り分けるかという問題や、売り上げ計上のタイミングや方法、値引きの方法、受発注の手続きなどについて、業界のスタンダードを定め、ガイドラインのようなものをつくる」(林会長)べく検討を重ねている。いわば“クラウドビジネスの作法”の業界標準をつくることで、クラウドサービスのベンダーや販売店の健全なビジネス環境を整え、ユーザーが旧来の慣習を引きずった不合理な手続きなどに煩わされることなく、クラウドのメリットを享受できるようにしていく狙いがある。
林会長は、「こうした業界標準ができれば、販売店がビジネスをしやすくなるのはもちろん、ユーザーのクラウド導入のハードルを下げる効果もあるし、さまざまなベンダーがクラウドサービスに新たに参入しやすくなり、市場の裾野拡大や活性化に総合的に効いてくるはずだ」と力を込める。
市場で広く適用される業界標準をつくるために、他の業界団体や経済産業省とも連携するとともに、JCSSA自身のコミュニティ拡大にも注力していく。現在JCSSAの会員企業は正会員(販売店)、賛助会員(ハード/ソフトメーカー、クラウドサービスベンダーなど)を合わせて約250社だが、林会長はこれを来年6月までに300社まで増やすという目標を掲げている。新興クラウドサービスベンダーなどと積極的にコンタクトを取ってJCSSAに迎え入れ、彼らが既存会員とともにクラウドのビジネスエコシステムをつくる支援をしたい考えだ。
さらに、大手SIerに対する勧誘活動も進めているという。林会長は「情報サービス産業協会(JISA)というSI業界の巨大な団体もあるが、彼らはあくまでもシステム開発のビジネスにフォーカスしている。SIer自身は“販売”を自分たちの本業だとは考えていないが、少なくとも彼らのビジネスには部分的ではあっても販売の要素がある。その部分で一緒に戦うことは互いの利益になるはずだと主要なSIerには呼びかけている」と話す。大手SIerもJCSSAに取り込んでいくことで、クラウドビジネスの業界標準づくりやその普及などがよりスムーズに進み、さらなる“販売の進化”も見えてくると言えそうだ。