企業がビジネスを成長させるうえで、データ活用の重要性は増している。スプランクサービスジャパンが3月17日に公表した調査結果によると、先駆的にデータを活用できている企業は、収益増とコスト削減を実現し、市場で競争優位に立っている現状が浮かび上がった。世界各国の企業のなかで、日本企業はどのような位置にあるのか。
福島 徹 日本法人代表
調査は、米スプランクとESG社が2019年7月~8月にかけて、日本や米国、英国、ドイツ、フランス、中国、オーストラリアに拠点を置く経営幹部ら1350人を対象に実施した。調査対象の企業は金融やテクノロジー、製造・資源など8業種で、従業員数は500人~2万人以下とした。調査に応じた日本企業の内訳は、500~999人の規模が21%、1000人以上の規模が79%だった。
調査では、データ活用の状況などに応じて、企業を三つのグループに分類した。最も活用が進む最上位グループの「データイノベーター」は全体の11%にとどまり、世界中のほぼすべての企業が、大量のデータを放置し、大きな価値を実現し損ねていることが明らかになった。
企業にとってデータの活用は一筋縄ではいかないが、活用が進めば、大きな成果をもたらすことが調査結果で判明した。データイノベーターは、過去1年で収益増とコスト削減を実現し、両方を合わせて平均3820万ドル(約42億600万円)の経済的価値を創出。製品・サービスの開発や市場投入のほか、意思決定の迅速さで競合他社を上回っていると回答した。
とくに先進的なのは米国とドイツで、データイノベーターの割合が16%と世界平均を上回った。日本は、経営上の意思決定にデータを活用する企業の割合は33%と世界で最も高く、スプランクサービスジャパンの福島徹・日本法人代表/エリアヴァイスプレジデントは、オンラインによる説明会で「日本企業がデータをおろそかにしているわけでは決してない」と述べた。
ただ、データイノベーターの割合はゼロで、全世界で最下位。日本がデータ活用の度合いで各国の後塵を拝している理由について、福島日本法人代表は、分析ツールと分析スキルの不足が課題になっている企業が多いと紹介し、「陣頭指揮を執る責任者を置く企業が少なく、データ分析などの取り組みに充てる予算も低い。(先頭の)米国とは全く逆になっている」と語った。
そのうえで、成功のためには進化が必要だと説き、「データ分析は、人間の頭だけではできない。ツールや技術、社員の教育、人材の採用を積極的に進めてほしい」と強調。ほかにも、人工知能を使った自動化の推進やデータ資産の価値の定量化を推奨した。(齋藤秀平)