決算プラットフォームベンダーのブラックラインは、ERPベンダーやSIerなど10社1団体と「リモート決算推進共同宣言」を行った。第1四半期(4-6月)はコロナ禍で多くの企業が在宅勤務を余儀なくされ、決算業務の遅れが目立ったことから、会計や決算と関係の深いベンダーなどと連携。今年度本決算(2021年3月期)までにリモートワークに完全対応した業務フローに切り替える支援を行う。リモートワークに対応しきれていないケースが多い経理業務の課題解決を商機と捉え、ビジネス拡大に乗り出すのが共同宣言の狙いだ。(安藤章司)
ブラックラインの古濱淑子社長(写真手前)とビデオ会議で参加した賛同企業/団体の担当者
ブラックラインの「リモート決算推進共同宣言」に賛同したのは、SAPジャパン、コンカー、プロネクサス、ディスクロージャー・プロ、オープンテキスト、SIerのセゾン情報システムズ、アスタリスト、アビームコンサルティング、日本IBM、監査法人のEY新日本、日本CFO協会の10社1団体。
日本CFO協会が131社を対象に緊急事態宣言が終わった6月に実施した調査によれば、完全リモートで決算業務を行うことができたのは全体の6%に過ぎず、「全員出社」「半数以上出社」を合わせた割合は48%に達した。請求書や銀行提出書類などの確認や押印、監査法人との打ち合わせ、社内の決済書類の押印、対面による社内会議といった理由から多くの経理担当者が出社していた。
「経理部門は(他の部門に比べて)ネットワークで情報を共有する意識が低い傾向にある」と、日本CFO協会の谷口宏専務理事は指摘。デジタル文書を印刷して上司に承認印をもらうプロセスも少なくなく、「リモートワークに対応することは経理部門の生産性向上に直結する」と話す。さらにSAPジャパンの宮田伸一・常務執行役員クラウド事業統括は、「デジタルデータを分析して売上利益を増やすことを最終的なゴールにすべき」とし、紙やハンコをなくし、経理業務の完全リモートを実現することは、データドリブンな経営にシフトする大きなきっかけになるとの見方を示す。
ブラックラインの主力商材である決算プラットフォーム「BlackLine」は、ERPや文書管理、決算関連システムをつなぎ、決算業務をデジタル化。経理業務のリモート化に役立つことを改めて市場に訴求する。需要と関心が高まっている今のタイミングで、「第2四半期(7-9月)中にリモート決算プロジェクトをスタートさせ、第3四半期で試験運用、21年3月期の本決算は完全リモートの実現を推進していく」(ブラックラインの古濱淑子社長)計画だ。
今回の共同宣言に賛同した企業・団体との連携を通じ、向こう1年で完全リモート決算の比率を直近の6%から30%に高める目標を掲げる。