NTTコミュニケーションズ（NTTコム）は新型コロナ禍による市場環境の変化を踏まえてビジネスの拡大を図るべく、「産業や街づくり、教育を三つの重点領域」（丸岡亨社長）と位置づけ、優先的に取り組む方針を鮮明にしている。サプライチェーンの完全デジタル化や、災害に強い安心な街づくり、公教育の分野に焦点を当てる。NTTコムの戦略商材でデータ共有基盤の「Smart Data Platform（SDPF）」などを活用したソリューションの提供に注力し、ビジネスの拡大につなげる。（安藤章司）


　今年6月19日にトップに就任した丸岡亨社長は、本紙の単独インタビューに応じ、NTTコムの七つの重点領域のうち「災害に強いサプライチェーンやスマートシティ、教育のIT環境整備の三つを最優先で取り組んでいく」と話した。

　サプライチェーンを構成する企業のうち、紙やファックス、押印といったアナログ業務の割合が多ければ多いほどリモートワークが困難となり、コロナ禍による負の影響を受けやすくなる。そこで、NTTコムでは業務のデジタル化を推進するとともに、SDPFを駆使してサプライチェーン全体でやりとりされるデータ流通を支援する。

　SDPFは重要データを安全に流通させる仕組み「DATA Trust」を実装しており、サプライチェーンに参加する業界が協調しながら設計や調達、組み立て加工に必要なデータを共有できる。「コロナをはじめとする災害でサプライチェーンが中断や遅延を起こすことのない、強靱かつ生産性の高いプラットフォームづくりに力を入れる」（丸岡社長）と話す。

　街づくりについては、NTT持ち株会社がトヨタ自動車と業務資本提携を取り交わすなど「NTTグループ全体で取り組んでいるテーマ」（同）とし、生活や仕事、公共サービスといった全ての領域でデータを共有する「スマートシティプラットフォーム」の構築にNTTコムも加わる。コロナの文脈で言えば、対人距離の確保をはじめ感染拡大を防ぐためのデジタルツール、情報共有の需要に応えていくことで安心な街づくりに役立てたい意向だ。
　公教育では、国のGIGAスクール構想をじめ教育現場のIT環境の整備に予算がついており、NTTコムが開発する教育向けクラウドサービス「まなびポケット」や、自社の社員教育などで活用してきた「リモート学習の知見を生かせる」（同）と判断した。民間企業のリモートワークやeラーニングの環境に比べて、公教育のリモート学習は大きく遅れていると指摘されていることから、ビジネスチャンスは大きいと見る。

　このほか、コロナ禍でのリモートワークで不足しがちな立ち話感覚での気軽な相談や雑談をオンラインで実現する仮想オフィスサービス「NeWork（ニュワーク）」をこの8月末からスタート。チームワークを円滑にしたり、新しいアイデアを生み出すためのコミュニケーションに役立つ新商材も随時投入する計画だ。

　NTTコムでは、産業、街づくり、教育、健康、働き方、移動、顧客体験の七つの分野のデジタル化、スマート化を重点領域と位置づけている。コロナ禍によって働き方、暮らし、学び方が大きく変化することを見越して商材を拡充させることで、ビジネスを伸ばしていく。