新型コロナウイルスは飲食・サービス業の市場環境を大きく悪化させており、生産性向上と感染拡大対策は急務となっている。ソフトバンクロボティクス(冨澤文秀社長兼CEO)は9月28日、飲食・サービス業向けの配膳・運搬ロボットを新たに発表。肉体的・精神的に負荷の高い運搬業務を肩代わりすることで従業員の負担を軽減しつつ、非接触型オペレーションの実現に寄与すると強調した。近くパートナーエコシステムも本格的に拡大し、将来的には慢性的な人材不足問題の解消にもつながる飲食・サービス業のDXソリューションに発展させていきたい考えだ。(銭 君毅)
Serviと坂田大常務執行役員兼CBO
ソフトバンクロボティクスが発表したのは、配膳・運搬ロボット「Servi」。導入負荷の低さと高い回避性能、分かりやすい操作性が特徴。ServiにはSLAM技術(マッピングと自らの位置特定を同時に行う機能)を搭載していることから店内にマーカーを設置する必要がなく、トレーニングも含め3時間で設置・稼働できるという。60cmの道幅でも走行可能で、カバンや椅子、人物を認識し、止まることなく回避できる。ロボットの操作はタッチパネルで行き先と決定ボタンを押すのみ。重量センサーにより、各テーブルに配膳したら自動で帰還する機能も持つ。
複数台、複数店舗での運用にも対応し、全ロボットを統合的に管理するプラットフォームもクラウド上に構築した。これによりロボットの稼働状況や利用回数などのデータを一元的に把握できる。また、現在は未整備だが、今後は業務システム連携の機能なども整備していく方針だ。バックオフィスとの連携のほか、オーダータブレット端末からServiを呼び出す機能なども想定しており、ホール業務の効率を最大限向上させるのが目標だ。
坂田大・常務執行役員兼CBOは「継続的な人件費高騰に加えてコロナ禍の追い打ちで外食産業は厳しい状況にある。生産性の改善と非接触オペレーションのニーズは高まっている」と指摘。「コロナ収束後には構造的な人材不足も再浮上するはず。われわれとしての解を出したいと思い開発した」と語る。既にセブン&アイ・フードシステムズやソルトグループなど10社以上の企業で実証実験を行っており、半年間で約3000kmを安定的に運用できているという。その結果、最大でホールスタッフの滞在時間が2倍になったほか、ランチタイム時の客数が21%向上、1日で9時間の作業時間を削減できた。
実験を実施した一社、物語コーポレーションの加藤央之社長は「1日で約300回の料理提供をこなし、8キロの走行距離を記録した。食べ放題の業態では配膳の負担が大きく、品質の高い接客が難しかったが、今後は人とロボットの適材適所で対面接客による付加価値を高めていきたい」と語る。また、とんでんホールディングスの長尾治人社長は「Serviの導入で接客時間が倍近くに向上し、お客様の満足度を向上させている。最終的にはとんでんで多店舗展開していきたい」と語る。
Serviの販売では、既に5社以上から販売パートナーとしてのアプローチを受けているといい、販路は随時拡大していく。また、業務システム連携などの機能追加を見据え、SIパートナーを含むパートナーエコシステムの構築・拡大も視野に入れる。
坂田常務は「飲食店以外でもさまざまな利用シーンがあると考えていて、例えば小売店などの品出し支援や移動式陳列棚として使えるかもしれない」と説明し、医療・介護施設やホテル、旅館など幅広い領域への拡販に意欲を示した。