医療テックのUbie(ユビー)が問診業務の自動化アプリ「AI問診ユビー」の導入医療機関を病院から診療所へと広げ始めている。これに伴い、問診から診察予約までのサポートや、健康情報管理システムへの対応などの機能強化を図る。加えて、医療機能の分担と専門化を推し進める地域医療連携を後押しし、医師らのデジタル導入の抵抗感を和らげていく施策に注力する。

阿部吉論 共同代表取締役

 同社は2017年5月、高校の同級生だった医師の阿部吉倫代表取締役とエンジニアの久保恒太共同代表が2人で創業。18年9月に「AI問診ユビー」の提供を開始した。同社によると、医師の労働時間が過労死ラインの2倍に設定されており、1割の医師が年間2000時間以上も残業するという。そこで、労働時間が長くなる原因の一つであるカルテ作成などの事務作業をITで肩代わりし、医師が患者に向き合う診療時間を増やす。そうしたコンセプトで開発したのがAI問診ユビーだ。

 医師の過酷な労働環境を改善するために開発したAI問診ユビーは、初診時などに患者が「気になる症状」や「過去の病気」など20~30の質問をタブレット端末から入力していく。診療前にこうしたプロセスを経ることで、医師は患者と対面で基本的な問診のやり取りをする必要がなくなり、最初からより踏み込んだ診療が可能になる。問診結果はパソコンに自動表示され、電子カルテに取り込むことができる。

 AI問診ユビーを導入済みの医療機関は、現時点で200ほど。「カルテではなく、患者と向き合える時間が増えたと喜びの声を多くいただいた」「問診時間が3分の1に削減できた」「患者の滞在時間が20分超減った」「受付の看護師を10人から8人にし、病棟側に派遣するなど最適な人員配置ができた」などの評価があるという。ただし、導入しているのは大規模な病院が多く、全国に数万ある診療所にはほとんど採用されていないという課題もある。

 そこで、診療所などが求める機能強化にも力を入れているという。具体的には、金融機関のATMなどを参考に、高齢者にも使いやすいようにUI/UXを改善している。新型コロナウイルスに感染した可能性がある患者などにも来院前の問診ができるように、スマートフォンからの入力も実現した。感染の可能性が高ければアラートを鳴らし、診察の順番を変えたり、患者を個室に移したりなどといった対応もできる。

 また、約5万件の疾患を学習し、AIの予測精度を向上させているほか、お薬手帳をスキャナで読み込む機能や、傷病者の緊急度に応じて搬送や治療の優先順位を決めるトリアージ支援も追加する。AI問診ユビーの使用料は、病院向けが年間150万円からなのに対して、診療所向けは月額1万円と安価な設定にした。2月26日までの契約で、利用開始日から1年間、無償で提供することも発表している。

 さらに同社が期待を寄せるのが、20年4月にリリースした「AI受診相談ユビー」とAI問診ユビーの相乗効果だ。AI受診相談ユビーは、生活者がスマートフォンを使って症状に応じた地域の医療機関や相談先を無料で調べられるサービスで、月間約40万人が利用している。阿部代表取締役は「AI問診ユビーとAI受診相談ユビーとのシームレスな接続により、診療所と病院が一体で構成する地域医療連携の推進をサポートできる」と、公共医療機関への導入を働きかける考え。

 販売チャネルも拡充する。20年6月には、医薬品卸のスズケンと資本業務提携を取り交わし、同社営業が医療機関にAI問診ユビーを紹介する。AI問診ユビーの機能強化や販売体制などを整えた同社がユーザーをどこまで増やすのか、21年は正念場になる。
(田中克己=IT産業ジャーナリスト)