福島県会津若松市の企業などでつくる会津産業ネットワークフォーラム(ANF)とアクセンチュア、SAPジャパンの3者は4月9日、中小製造企業向けのSaaS型デジタルICT共通プラットフォーム「コネクテッド マニファクチャリング エンタープライゼス(CMEs)」を構築し、提供を開始したと発表した。CMEsを利用することで25%の生産性向上が見込めるといい、同市での実績を基に全国への普及を目指す。

アクセンチュア 中村彰二朗 マネジング・ディレクター

 CMEsは、SAPのERPスイート「SAP S/4HANA」をベースとし、MES(製造実行システム)やサプライヤポータルなどの機能を実装している。アクセンチュアの標準テンプレートは、中小企業向けに変更を加えているが、カスタマイズは極力しないという考え方で各企業に展開する。提供形態は、中小企業が無理なく導入できるように、月額制のサブスクリプションモデルを採用する。

 記者発表会で、アクセンチュアの中村彰二朗・イノベーションセンター福島センター共同統括マネジング・ディレクターは「中小企業はIT化やシステム化に大きなコストをかけられず、個別の企業でシステム部門をきちんと持つことは難しい。それを解決するためにわれわれが選んだ方法が共通化だ」とし、「企業の中心となる会計や受注も共通化していくため、経営者の意識改革が非常に重要になる」と強調。25%の生産性向上については、1年間、現場で調査してきた結果とし、「机上の空論ではない」と話した。

 また、国が提唱する「コネクテッド・インダストリーズ」の実現に向けたロードマップも示し、計四段階で取り組みを進めると説明した。具体的には、第一段階で非競争領域のICT基盤の共有化を進め、第二段階のデータ分析を本年度の新たなプロジェクトとして始動させると紹介。その後、第三段階で機器や工場同士の連携による自動化を実現し、最終段階で企業間連携の促進やイノベーションの創出を目指すとした。

 SIerにとっては、運用の部分がビジネスチャンスになる。中村マネジング・ディレクターは「全国の中小企業にプラットフォームを広めていく際、運用パートナーが非常に重要になる。アクセンチュアが全体をサポートするよりは、身近に地元のSIパートナーがいるほうが、われわれのビジネスモデルにとっても、地域の各企業にとっても大変安心だ」と語った。

 同市では、SIやクラウドサービスの運用などを手掛けるエフコム(福島県郡山市)がパートナーとなり、ANFの会員企業などを支援する。エフコムの瓜生利典社長は「地域の中小企業のデジタル化は、コストや専門要員の確保が課題となり、なかなか進まない状況がある。今回の共同利用型のモデルは、それらの課題を解決する一つの方法になると捉えている」と期待した。

 発表会には、アクセンチュアの江川昌史社長やSAPジャパンの内田士郎会長らも出席した。このなかで江川社長は「地方の生産性は一般に都会部に比べて低いと言われており、主たる原因はITをうまく活用できていないところにある」と指摘し、CMEsの提供によって「コネクテッド・インダストリーズに向けて新たな道を切り開けた」と述べた。(齋藤秀平)