クラウド型データウェアハウス(DWH)開発の米スノーフレイクは、クラウド基盤として新しくAzure、AWS大阪リージョンを追加する。現在のAWS東京リージョンに加えて、今年秋をめどにAzureに対応するとともに、来年にはAWS大阪リージョンにも対応させる予定だ。グローバルではAWS、Azure、Google Cloud Platform(GCP)の主要クラウド基盤への対応を基本としており、国内においてもユーザー企業が増えてきたことからクラウド基盤を選択できるようマルチプラットフォーム化を進める。
米スノーフレイク ジョン・ロバートソン アジア太平洋・日本地域 社長
クラウド型DWHの最大のメリットは、データの増加に伴ってコンピューター資源をほぼ無制限に拡張できることだ。スノーフレイクのクラウド型DWH「Snowflake」はクラウドの拡張性を生かし、数百ギガの小規模なデータからペタバイト級の大規模データまで自在に拡張・縮小できるだけでなく、従来のユーザー企業先に設置する「オンプレミス型のDWHと遜色ない処理スピードを発揮できる」(米スノーフレイクのジョン・ロバートソン・アジア太平洋・日本地域社長)ことが高く評価され、会社設立からわずか8年目の昨年秋に米本国で株式を上場するまで急成長した。
スノーフレイク日本法人の東條英俊・カントリーマネージャーは、「国内では依然としてオンプレミス型のDWHのユーザーが多く、クラウド基盤への移行はこれからが本番」として、オンプレミス主体のDWHベンダーからのリプレースを狙う。すでに日鉄ソリューションズやNTTデータ、伊藤忠テクノソリューションズ、クラスメソッド、電通国際情報サービスなど40社ほどのDWHに強い国内ビジネスパートナーと協業を進め、クラウド移行ビジネスを加速させていく。
スノーフレイク日本法人 東條英俊 カントリーマネージャー
クラウド基盤へ移行することで、DWH用のサーバーやソフトの管理に従事していた技術者をデータ分析に回せるとともに、クラウド上にあるAIアルゴリズムや各種のデータ分析ツールが使いやすくなり、より精度の高い分析結果が効率よく手に入る。また、ユーザー企業のグループ会社や国内外の拠点とDWHを共有しやすく、外部のデータ販売会社からオンラインでのデータ入手も容易だ。この6月には気象情報を販売するウェザーニューズが「Snowflakeデータマーケットプレイス」に気象情報の提供をスタート。例えば、小売業のDWHと連携することで気象状況の変化に合わせて商品の適切な仕入れ、販売の予測がしやすくなる。
グローバルでは、Snowflake向けにデータを販売している会社が170社を超え、気象情報や交通情報、株価、許諾済みの個人情報、コロナの地域別感染者の情報などが売買され、DWHを通じてユーザー企業のビジネスに生かされている。Snowflakeユーザーを俯瞰すると契約1年目のデータ量に対して「契約2年目は平均して2.7倍にデータ量が増えている」(ロバートソン地域社長)と、クラウドの拡張性とデータ入手の容易さが後押しするかたちでデータ取扱量が大きく伸びる傾向が見てとれる。DHWの精度が高まればユーザー企業の競争力が高まり、Snowflakeの活用割合も増える好循環が生まれている。
米スノーフレイクの昨年度(2021年1月期)連結売上高は5億9200万ドル(約650億円)で、今年度は倍増する勢いで伸びる見通し。(安藤章司)