エンタープライズ向け会話型AIプラットフォーム・製品を手掛ける米Kore.ai(コア・エーアイ)が日本市場の開拓に向けて動きを強めている。2020年10月に日本法人を立ち上げ、今年から本格的な営業展開に乗り出した。バーチャルアシスタント用途が主で、高い自然言語処理能力や、ローコード・ノーコードでの開発環境による内製化の容易さなどを武器に売り込み、すでに複数社が導入を決めた。まずは社内のヘルプデスクなどBtoE領域での普及を進める方針だ。会話型AIの市場はまだ開拓が進んでおらず、同社の角田晴雄副社長兼営業統括は「市場を活性化させながら、今後3年でシェアの30%を得たい」と意気込む。
角田晴雄 副社長
コア・エーアイは14年設立で、18年の途中まで営業活動は行わず、自然言語処理のエンジン開発、プラットフォーム開発に注力していた。営業開始から2年程度で世界2000社の導入実績を有し、米フォーチュン誌が選出する「フォーチュン500」のうち100社以上が採用しているという。
同社の会話型AIプラットフォームは、三つのエンジンによる高度な自然言語処理技術によって、「人と会話をしているような形で問い合わせやアクションの実行ができる」(営業本部の御舩浩次郎・シニアインサイドセールスレプリゼンタティブ)点に特徴がある。
御舩浩次郎 シニアインサイドセールスレプリゼンタティブ
従来のチャットボットなどがユーザーの目的や意図を選択肢から選ぶ形や、短文のフリーワードで入力する形式である一方、コア・エーアイの技術を生かしたバーチャルアシスタントは文脈を認識し、文章形態での質問にも正確に対応する。要求が複数ある文章も理解し、例えば、送金を依頼するケースで「10万円を送金し、残高を教えてほしい」ということもできる。
また、一つのリクエストを解決している途中に別のリクエストを割り込ませることや、AIが返したことに対して新しい質問を寄せることも可能となっている。外部システムとの連携も容易で、リクエストに応じて別のシステム内で保管されている情報を自動的に取得し提示してくれるほか、システムに情報を追加することもできる。
入力チャネルは電話やメール、SNS、チャットなど幅広く対応している。プラットフォーム上でのバーチャルやアシスタントの開発は、ノーコード・ローコードに対応しており、IT部門以外でも開発でき、内製化するケースも多いという。
同社によると、会話型AIについてはまだ市場ができあがっておらず、ガードナーのマジック・クアドラントにも今年から新たに加わる見通しであるなど、これから認知度を上げていく段階だ。同社は今後3年で市場がある程度形成されるとみて、市場シェアの拡大を目指す。
まずはBtoE領域で導入し、成果を踏まえてBtoB、BtoCへの横展開を検討する顧客も多く、角田副社長は「業種、業界に関係なくビジネスを進めていく」と話す。現時点ではダイレクト営業を中心に取り組んでいるが、SIerをはじめとするパートナーの拡大にも積極的な姿勢を示している。(藤岡 堯)