欧州SAPはクラウドビジネスに大きく舵を切っている。顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援だけでなくSAP自身もDXに取り組む中で「未来はクラウドにあると分かった」とユルゲン・ミュラーCTOは言う。ただし、顧客企業のシステム全てがパブリッククラウド化するわけではなく、ハイブリッドクラウドが選択されるケースも多いだろう。それでも新しい技術はクラウドネイティブで開発され、顧客のビジネスや情報システムをアップデートしていく構図に変わりはない。その意味で、SAPは自らのビジネスを「クラウド化」していこうとしているのだ。同社は自らのクラウドビジネスが、2025年には20年比で3倍になる可能性があると見ている。ミュラーCTOに目下の戦略を聞いた。
(取材・文/谷川耕一  編集/本多和幸)
 
SAP ユルゲン・ミュラー CTO

 SAPがクラウドビジネス拡大のための重点施策と位置付けるのが、今年初頭に発表した新たなサービスパッケージ「RISE with SAP」だ。RISE with SAPとはいったい何なのか。同社はこれを“Business Transformation as a Service”と表現している。顧客企業のビジネス変革を実現し、クラウドへの移行を加速するサービスだという。ミュラーCTOは「SAPはビジネス変革に対してもっとはっきりとした役割を果たしてほしいとの声が顧客からあり、それに応えたものだ」と説明する。

 RISE with SAPでは、SAPが顧客にソフトウェアや関連サービスを提供するだけでなく、ビジネスプロセス全体を最適化し自動化する具体的な施策まで踏み込んで提案する。理想的なビジネスプロセスと現実のギャップを可視化し、ワークフローの改善、システムのインテグレーションや機能拡張により、顧客のビジネス変革を実現するのだ。

 RISE with SAPの中核を成すのは、ERP製品の「SAP S/4HANA」と、ビジネスアプリケーションのインテグレーションやAIなどを活用した機能拡張をローコード/ノーコードで実現する基盤「SAP Business Technology Platform」(BTP)だ。この二つを使い、既に世界中の企業がビジネス変革で大きなメリットを得ているという。SAP自身も、ERPの機能やアプリケーションとしての完成度を高めるためにBTPを活用している。