NTTと欧州SAPは12月7日、「全方位的なパートナーシップ構築に向けた戦略的提携を拡大する」と発表した。同日、両社はオンラインで記者会見を開き、NTT持ち株会社の澤田純社長と欧州SAPのクリスチャン・クラインCEOが今回の協業強化の意図と取り組みの方針を説明。両社にとって特別な協業であることをアピールするとともに、特にグローバルなサプライチェーンの高度化という観点で、市場に大きなインパクトを与えるソリューションを共創していく意向を示した。(本多和幸)
NTTの澤田純社長(左)と
欧州SAPのクリスチャン・クラインCEOがオンライン記者会見で顔をそろえた
「NTTグループとSAPは30年以上にわたって良好な関係の下に協業してきた歴史がある。完全なデジタル社会を迎えようとしている現在、協業を次の段階に進めるのは自然な流れだった」。記者会見でNTTの澤田社長は今回の発表の背景をこう説明した。
SAPは近年、AI、IoT、データ分析基盤などの最新テクノロジーを活用して従業員がより価値の高い業務に集中できるようにする「インテリジェントエンタープライズ」という概念を提唱し、その実現を目指した製品・サービスのポートフォリオ整備に注力してきた。クラインCEOも「まさに企業をインテリジェントエンタープライズに変革するためのソリューションを共創する、Win-WinのパートナーシップをNTTグループと構築していく」と応じた。
ただし、現時点で明らかになっている協業のスキームはかなり大まかなものだ。SAPが持つIoTやエッジコンピューティング、AIなどのインテリジェントな技術と、NTTグループのIT、通信、グローバルで展開しているハイブリッドクラウドなどの技術力を組み合わせ、サプライチェーン領域を中心に顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)につながるソリューションを共同で開発するとともに、マーケティング活動を行う。顧客、サプライヤー、小売業者、製造業者、配送業者などのビジネスエコシステムが統合的に連携し、リアルタイムなデータ分析により継続的な顧客体験の改善やビジネスモデルのアップデートにつなげられる世界をイメージしているという。
ひとまず今回の発表では、NTTと欧州SAPがお互いに体制を構築した上で従来よりも一歩踏み込んだグローバルレベルでの協業を進めていくことが明確になった。SAPジャパンの鈴木洋史社長によると、「具体的にどういう業種、どの地域に対してのソリューションを構築していくかというビジネスプランづくりが進んでいるというのが現在の状況」だ。詳細なアクションプランは来年に入ってから明らかになる見込み。
「SAP Labs Japan」を中心に
SAPジャパンも専任部隊を構成
また、NTT側は、NTTデータグループやNTTコミュニケーションズなどが共創の取り組みの主体になるとみられるが、SAPはグローバルで体制を整えるともに、SAPジャパンとしても専任のチームを設けて対応する方針だ。日本市場のDXニーズを吸い上げてSAPの製品・機能開発に生かすべく2019年に東京に設置したグローバル研究開発組織「SAP Labs Japan」の人員などが中心になる見通し。鈴木社長は「SAPジャパンの戦略とも一致している取り組みだ」として、日本法人としても積極的な投資を行うことを示唆した。