オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、主な顧客層とする中堅・中小企業のDX推進を目的に、SaaS型の基幹業務システム「奉行クラウド」を強化している。各企業がインボイス制度と改正電子帳簿保存法への対応を進める中、「制度改正×DX」をキーワードにビジネスチャンスを最大化できると判断したからだ。従来システムの単なる置き換えではなく、業務プロセス全体を一気通貫に変革し、顧客の経営力強化を支援する。
戦略の核となるのは、5月26日に発表した「奉行クラウド DX Suite」だ。DX Suiteでは、経理と人事労務、販売管理の各領域向けのソリューションを用意し、企業経営の重要な指標となるヒト・モノ・カネに関する具体的な業務をカバーできるようにした。奉行クラウドで提供する製品を領域ごとにまとめた構成になっている。
和田成史 社長
同社は、インボイス制度と改正電帳法への対応次第で、その後の競争力に大きな差が出る可能性が高いとみる。和田成史社長は「既存のシステムを新しいシステムに置き換えるだけでは、逆に業務プロセスが複雑になり、従業員の負担が増えてしまう」と指摘し、業務プロセス全体を対象にDXが進められるDX Suiteは、他社との差別化要素になるとの考えを示す。
既存サービスの見直しも図る。これまで商奉行クラウドと債権奉行クラウド(Sシステム)のいずれかのみで連携可能だった「奉行Edge 請求管理電子化クラウド」を、電子インボイスへの対応を予定する単独サービスとして7月に提供を開始する。料金体系については、オンプレミス版も含めて全ての奉行シリーズを本年度中にサブスクリプションモデルに切り替える。中堅企業向けERPパッケージ製品「奉行V ERP」のSaaS版を今秋ごろに出荷する計画もある。
販売戦略では、引き続きパートナー経由の導入拡大に力を入れる。具体的には、奉行クラウドの導入による定量的な効果の訴求を後押しする。バックオフィス部門と経営層向けの提案ツールをそれぞれ用意し、需要の獲得につなげてもらう。経理系のDXサービスについて、2年分の利用料が申請できるIT導入補助金の活用促進に向け、申請に必要な製品の組み合わせなどをまとめた「DXモデル」も提供する。また、全国の中堅・中小企業にDXのメリットを知ってもらうため、情報提供や事例の収集・紹介、DXの推進を活動の柱とする「バックオフィスからDX化プロジェクト」を5月に立ち上げた。
同社は、総務省のデータから、奉行シリーズの導入ラインとなる従業員10人以上の企業は国内に約120万社あると試算。昨年12月に実施した顧客調査で、改正電帳法への対応を検討している顧客が20%だったことから、この割合を約120万社に当てはめると、推定25万社が今後2年間で制度改正への対応に向けてIT投資をする可能性があるとみている。
和田社長は「各企業のDXの実現に向けて引き続き一歩一歩前進していく。クラウドビジネスでも、パートナーと一緒になって、お客様に最高のサービスを提供していく」と意気込んでいる。
(齋藤秀平)