今回もAIモデルの構築で7割から8割の工数を費やす前処理作業について解説したい。初回のコラムで、「AIは役立つデータがないと動かない。経験と記憶から成功パターンを見つけた人の知能が必要なのだ」と説明した。ある意味、AIモデルの構築とは、エースプレーヤーの自動化といえる。ベテラン社員の知見を、新入社員でも活用することができるようになる。ただし、その知見が暗黙知で形式知化できていないケースも多い。今回の事例は、人が見ているデータはあるものの、そのデータはその人にしか判らないものだったケースである。
 
機器ごとに計測されるデータを収集し学習モデルを構築

 事例はネットワーク機器のリアルタイムでの故障予知である。その企業にはネットワーク機器の故障を予知できるベテラン社員のA氏がいた。A氏は「あの機器が壊れるから事前に発注しておくのです」という。そして、そのネットワーク機器は、A氏の言う通りに壊れるのである。「なぜ分かるのですか」と尋ねると、「音が悪いから」という。A氏は他の人に分からない音なるものを判断材料にして、故障を検知していた。