スポーツ領域のコミュニケーション支援事業などを手掛けるPLAYMAKERのビジネスモデルは、選手とクラブという二つのユーザーグループを結ぶ、プラットフォームビジネスであるといえる。当然、プラットフォームビジネスの特徴であるネットワーク効果を作り出していくことを狙っていきたいと考えたが、そのためにはどちらかのユーザーグループの数を増やしていかなければならない。当時からクラブや選手への広報活動、営業活動などで徐々にPLAYMAKERへの登録者数を増やしてはいたが、仕組みでユーザー数が増やせるようにしなければならないと考えていた。
そこで、参考にしたのがリクルートの「リボンモデル」である。ゼクシィ、SUUMO、ホットペッパーなど、リボンモデルといわれるビジネスモデルで多くの成功事例を持つリクルートは、二つのユーザーグループを「結ぶ」ために、まずは二つのユーザーグループを「集める」「動かす」というステップを踏んでいる。このステップはPLAYMAKERでも必要であると考え、PLAYMAKER式の「リボンモデル」を検討した。
PLAYMAKER式「リボンモデル」
プロトタイプ段階でのPLAYMAKERはリボンモデルでいうところの結ぶ機能はある程度備わっていたが、動かす部分および集める部分については考慮されていなかった。そのため、集める・動かす部分について、どのようなことが求められるかを検討し、PLAYMAKERの全体像を構築し直した。
「リボンモデル」を参考にしたPLAYMAKER全体像概要図
選手、もしくは将来の選手(学生)を集めて、動かすために情報発信を充実させ、クラブ側を集めるためクラブ向けの機能を充実させていく必要があると考えた。また、選手がとクラブ側では広報や営業の方法も異なってくるため、サッカー業界に精通した専門スタッフにより広報、営業戦略を立てていった。シーズンのスケジュールが決まっているため、営業を行うにしてもどの時期に誰に対して営業を行うかが重要になるため、業界に精通したスタッフが必ず必要となる。この時期にITプラットフォームだけではなく、人員体制も拡充させていった。
新事業を創出する際は、どのようなビジネスモデルにするのかを検討することが非常に重要である。今回の事例は、同じ業界で先行事例がなければ別業界のビジネスモデルを参考にするというところである。サッカー業界においてはPLAYMAKERのビジネスモデルが画期的となったが、他業界に目を向けてみると、同じようなビジネスモデルにおける成功事例は多くある。ビジネスモデルの形に抽象化すれば、他業界の事例を参考にすることができるということだ。抽象化したままでは具体的な施策にまで落とすことができないため、抽象化された他業界の事例を自分の業界に具体的に落とし込んでいくことが重要となる。
■執筆者プロフィール

荒井雄介(アライ ユウスケ)
シソーラス 取締役COO ITコーディネータ
大学卒業後、NTTデータ、アクセンチュア、TISを経て現職。システム監査技術者、プロジェクトマネージャ、システムアーキテクトなどのIT系資格も保有。MBAホルダーのITプロフェッショナルとして活動中。長野県ITコーディネータ協議会の理事も務める。政治学修士(同志社大学)、経営学修士(グロービス経営大学院)。