新型コロナ禍により、働き方は大きく変化した。従業員と組織がテレワークを受け入れ、オフィス勤務と在宅勤務を使い分けることができるハイブリッドモデルに移行しつつある。少なくとも、 全ての人が2年前と全く同じ働き方に戻ることはないだろう。
この働き方の変化を実現したのは、ITサービスの影響が大きい。ZoomなどWeb会議システムなどは短期間で普及したし、ワークスペースの導入も加速しておりの市場は拡大中だ。
これらの変化は、ITサービスを販売する企業であるパートナーにとってどのような意味を持つのだろうか。多くの企業がas-a-Serviceのサブスクリプション型に切り替えたことにより、直接ベンダーと取引する機会が増加している。サービスを販売するパートナーにとってはビジネスチャンスが減少したように思われるかもしれないが、そうではない。パンデミックはパートナーのビジネスを減らすどころか、実際には増加させているのだ。なぜなら、サービスを提供する企業の専門知識とスキルが不可欠あり、パートナーがこれまでの培った経験が必要とされるからだ。
柔軟性を求めるユーザー
企業は、仕事の進め方、働く場所、働く時間がより柔軟な新しい働き方を実現するために、テクノロジーにも柔軟性を求めるようになる。その結果、as-a-Serviceのビジネスモデルの需要が拡大している。
運用面や技術面での柔軟性を求めるユーザーも増えている。このような需要に対応するため、今後もas-a-Serviceモデルへの大きな移行が進むと予想される。実際、Microsoft、Google、Amazonといった大手ベンダーはマーケットプレイスでそれを推進している。
パートナーも従来の製品の再販から、顧客のためにサービスを提供し、サービスをホスティングすることに大きく舵を切ることになるだろう。パートナーがホスティングサービスやオファリングを推進する背景には、どのような理由があるのだろうか。
一つの要因として、「不確実性」が重要な要素であったことは明らかだ。パンデミックだけでなく、世界情勢や災害など、私たちは大きな不確実性の中でビジネスをしている。as-a-Serviceは、その被害を最小限に抑える一つの方法だといえる。組織に必要なのは、突然の事態に備えスケールアップとスケールダウンを行い、不確実な時代の変化に合わせて方針転換するための柔軟性と俊敏性だ。
また、価格においても柔軟性を重視する傾向が高まっている。電気や水道などの公共料金は、使った分だけ支払うのが当たり前だが、ユーザーは、この料金体系が自分たちのニーズに合っていると感じている。この「使った分だけ支払う」という考え方がテクノロジーの領域にも広がっている。つまり、「使っていないものに、お金を払いたくない」という価値観がIT業界にも浸透してきているということだ。
今後、社会が変化していく中で、こうした消費型、サービス型のモデルがますます注目されるようになるだろう。この進化に伴い、ユーザーだけでなく、パートナー側にも変革が必要となる。
パートナーには、請求プロセスの変更、決済システムの変更、そのほか運用上発生する問題などユーザーをサポートする業務が増えるため、ビジネスモデルの下流に至るまで影響を考慮する必要が出てくる。これらに対応するため、新しいスキルや方法論を開発が重要となる。加えて、プロダクト中心からサービス中心の考え方に変えていくことも必須だ。
例えば、シトリックス・システムズでは、「Citrix DaaS」などサービスを提供するにあたり、さまざまな企業とパートナーシップを結びソリューションを販売している。「FJDaaS with Citrix Cloud」もその一つだ。FJDaaS with Citrix Cloudはパブリッククラウドとしてニーズの高いマイクロソフト社の仮想デスクトップ「Azure Virtual Desktop(AVD)」を基盤として、仮想デスクトップ環境の管理を高度化するサービス「Citrix Cloud」と組み合わせた、 従量課金型のパブリッククラウド型の仮想デスクトップサービスである。
これは富士通が前述の二つのサービスを組み合わせ、顧客のニーズに合わせて販売しているソリューションだ。そこに、富士通独自のノウハウで導入支援やカスタマーサポートという付加価値を提供している。
変化するパートナーエコシステム
この新しい環境において、パートナーは自社のポジションを把握するのが重要だ。「Microsoft Azure」「Amazon Web Services」「Google Cloud Platform」などのプロバイダーの中で、自社はどのような位置づけにあるのか、エコシステムに適合しているのか、どのように変化に適応していくべきかを考える必要がある。
パートナーにしかできない仕事も増えている。IT環境が自ら、クラウド上に自然に移行していくことはなく、誰かがIT環境を整備しそれを行う必要があり、そのためには高度な技術と経験が要求される。
IT企業のビジネスのあり方が大きく変化したことは紛れもない事実だ。しかし、パートナーがユーザーと一緒に課題と機会を理解し、目標達成を支援するプログラムを構築し、共に未来へ進むための有益な道を引き続き築いていくということに変わりはない。
■執筆者プロフィール

國分俊宏(コクブン トシヒロ)
シトリックス・システムズ・ジャパン
セールス・エンジニアリング統括本部
エンタープライズSE本部本部長
ハイタッチビジネスであるエンタープライズSE本部の本部長。グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセールスとして支援する。