キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、ローコード開発プラットフォーム「WebPerformer-NX(ウェブパフォーマーエヌエックス)」を2023年1月下旬から販売する。パブリッククラウド上に開発環境と本番環境をセットで提供するaPaaS(アプリケーション基盤サービス)方式を採用しているのが特徴で、ユーザー企業はローコード開発の手法でクラウドネイティブなアプリの開発が可能になる。オンプレミス方式を基本とした既存の「WebPerformer」も併売する。
(安藤章司)
高橋宏明氏(右)と宮崎陽子氏
WebPerformer-NXは、ユーザー企業とその取引先との受発注システムや、代理店を支援するシステムなど「企業間取引(B2B)領域における“顧客接点”に焦点を当てたローコード開発ツールとしての用途を想定している」と、事業の立ち上げを担当しているデジタルビジネス企画部の高橋宏明氏は話す。既存のWebPerformerは、基幹システムの刷新で活用されるケースが多く、社内の事務管理用の操作画面の作成を前提としていたが、WebPerformer-NXでは外部ユーザーでも一目で操作方法が分かるUI作成を重視する。
価格体系は、顧客企業の取引先である外部ユーザーの利用人数で課金する方式で、100人未満で月額14万円から。初期版ではB2B領域を想定していることから、料金表では大規模利用の料金設定でも500~2000人程度としている。サービスの提供形態は、WebPerformer-NXを使ったアプリの開発環境と本番環境をセットにしたaPaaS方式で、クラウド基盤には「Amazon Web Services(AWS)」を採用した。aPaaS方式を採用したのは今回が初めてで、「従来のオンプレミスでの利用を基本とした既存製品とは一線を画したアーキテクチャーを採用した」(デジタルビジネス企画部の宮崎陽子氏)と、クラウドネイティブな開発と実行を実現している。開発したアプリはAPI経由で既存の基幹業務システムとデータ連携も容易にした。
WebPerformer-NXを開発した背景には、顧客接点やデジタル技術を活用した新規事業の創出の領域にユーザー企業の関心や需要が移っていることが挙げられる。社内の事務管理用のアプリとは異なり、顧客接点やデジタルビジネスを立ち上げようとすれば、クラウドネイティブ環境でのアプリ開発が強く求められるとともに、ユーザー企業内の情報システム部門と顧客接点を担う事業部門との連携が欠かせない。「ローコード開発とクラウドネイティブを組み合わせることで、顧客接点の強化や新規事業の立ち上げに役立つ開発・実行環境となる」と高橋氏は開発の狙いを話す。
WebPerformerはユーザー企業の社内用途のアプリ開発を軸に1300社を超える累計納入実績を持つ。キヤノンITSでは新規に開発するアプリの6割がローコードやノーコードで開発されるとみており、今回aPaaS方式によるWebPerformer-NXの投入によって、向こう3年で累計納入社数を2000社に増やしていく目標を掲げる。販売チャネルについては直近で約60社のビジネスパートナーがいるが、100社程度に拡充し、ユーザー企業の顧客接点、新規事業の創出の領域への販売力を高めていく。
11月25日に開催した経営方針説明会で金澤明社長は「(継続的な収益が期待できる)サービス提供モデルの中核をなす商材」だと位置づけ、WebPerformer-NXをはじめとするリカーリング型の収益モデルの売り上げを25年までに倍増させるとした。従来の案件単位で売り上げるシステム構築モデルに加えて、リカーリング型やデジタルを活用した新しい事業を顧客ともに創る共創モデルを掛け合わせることで収益力の強化を加速させる。
また、WebPerformer-NX初期版はB2B領域を想定しているが、「一般消費者を対象としたB2C領域への展開や、AWS以外のクラウド基盤への対応も検討していく」(松本一弥・執行役員デジタルビジネス統括本部長)と、適応領域やマルチクラウドなど多様な需要に応えていく考え。