「哲学というのは結構つぶしの効く学問なんです」と言い、バブルの絶頂期に「これからのビジネスはコンピュータだ」と予見して日本ディジタルイクイップメントに入社した。その頃からマッキントッシュを愛用し、1996年には「Macが好きで」アップルコンピュータに移った。その後のコンピュータ業界の栄枯盛衰はよく知られているところ。7年間システムエンジニア(SE)サポートとして働いた古巣の会社は合併・買収ですでに無い。
アップル入社当時は、Mac OS 7.5.3の時代。以降、日本語版ばかりでなく開発、製品化のプロダクトマネジャーも務めてきた。今ではアップルのイベントには欠かせない“顔”に。製品の“生みの親”とも言えるプロダクトマネジャー。「OS Xに移行するときが一番心配だった。OS 9から大きく仕組みを変えたので、世の中に認められるかどうか不安だった」とか。00年秋にパブリック・ベータ版を発表したときは、開発スケジュールや予算の厳しさもあって、「肉体的にも精神的にもキツかった」。
しかしOS XはMacユーザーには歓迎され、02年の「ジャガー」、03年「パンサー」と毎年バージョンアップ。今年は7月にサンフランシスコで開かれるワールドワイド・デベロッパーズ・カンファレンス(WWDC)で、「タイガー」が公開される。「気がついたら米本社に飛んでいたり」という相変わらず忙しい日々が続く。
プロフィール
櫻場 浩
(さくらば ひろし)1964年、東京都生まれ。89年、龍谷大学大学院西洋哲学専攻修了。同年日本ディジタルイクイップメント入社。96年1月、Mac好きが嵩じてアップルコンピュータに入社。OSの開発に取り組む。趣味は管楽器のユーフォニアム。市民オーケストラなどにも参加する。