ITエンジニアの人材育成施策が日本は希薄だと叫ばれて久しい。その打開策として国が用意した、エンジニアのIT関連能力を職種や専門分野ごとに体系化した指標が「ITスキル標準(ITSS)」。今年12月で発表から丸3年を迎える。だが、この指標を適切に理解し、有効活用している企業は驚くほど少ないのが現実という。
NTTソフトウェアの駒谷昇一氏は、ITスキル標準を活用した人材育成プランの作成支援コンサルティングを手がける。もともとは駒谷氏自身も技術者。ITエンジニアという職種に対する思い入れは強い。人事部に配属になったことをきっかけに、人材育成業務に携わった。
「エンジニアが自信を持っていない。当時からそう感じていた」
エンジニアのスキルを適正に把握できる指標が欲しいと、ITスキル診断ツールを世界で探し求めていた。「ITスキル標準」が発表される2年も前のことだ。
「ITスキル標準」発表後は、その価値に魅せられ、積極的にNTTソフトウェアで活用した。今では、コンサルタントとしてそのノウハウを顧客に提供するほか、IT業界全体の人材育成強化にも力を注ぐ。経済産業省や情報処理推進機構(IPA)への情報提供とともにITSSユーザー協会設立にも協力した。
「エンジニアは今、自分のキャリアプランを描けていない。ITスキル標準はこの現状を打破できる重要な指標。有効活用してもらいたい。エンジニアの将来を少しでも明るくしたいんです」
プロフィール
駒谷 昇一
(こまや しょういち)1960年、東京都出身。東京理科大学工学部経営工学科卒業。85年、エヌ・ティ・ティ・ソフトウェア(NTTソフトウェア)入社。UNIX系情報システムの設計、開発、プロジェクトマネジメント業務に従事した後、人事部にて人材育成プログラムの策定に携わる。04年から「ITスキル標準(ITSS)」の導入・活用に関するコンサルティング業務に従事。「ITSSユーザー協会」に設立当初から携わり、スキル定義ワーキンググループ主査を経て、現在はITSS導入コンサルタント認定委員会委員長を務める。このほか、産学協同の実践的な教育を広めるため、情報処理学会の委員会や大学の講師としても活躍する。