ヘッドウォータースは設立してまだ3年ほどのITベンチャーだ。情報システムの受託開発を手がける。最近の若いIT企業は、ネット系サービスを事業とするケースが大半。そのなかで創業者の篠田庸介代表取締役は、過酷な労働環境とイメージされ若年層に嫌われがちな“古きビジネス”に、あえて照準を合わせた。
「エンジニアの立場を変えたい」。きっかけは、そんな思いからだった。
「日本のソフトエンジニアは、システム開発すればそれでオーケーと考えている人が大多数で、収支を考えていない。ビジネス感覚が全くない。なんて幼稚なんだと思った。ビジネススキルも兼ね備えたエンジニアを育てたい」。
エンジニアでありビジネスマン──。そんな人材を育て上げるために、独特のマネジメント手法を取り入れている。
案件を獲得すると、そのつどプロジェクト責任者を社内公募。プレゼンが優れていれば、役職や年齢、社歴は一切関係なく指名する。開発者の人選から開発管理、収支までをすべてコントロールさせる。「事業部長レベルの責任と権限を一般社員がすぐに持てる」。厳格な監視体制があるため、経営感覚が未熟な人間に任せても「不採算案件は一つもない」。
ヘッドウォータースの社員は現在約130人。エンジニアは3年間に100人を超えた。社員の平均年齢は28歳。一般に受託開発企業は、そのビジネスモデルから若い人材を採用しにくく定着率も悪い。だが、同社には無縁の話だ。採用のためのPR活動はほとんど行わないにもかかわらず、毎月100人ほどの入社希望者が訪れ、離職率は5%を切る。「エンジニアを作業員にしない」「ビジネスマンとして扱う仕組み」が若いIT技術者を同社に引き寄せているのだ。
採用手法も独特で、経験や学歴は一切問わない。「誠実で経営理念、ビジョンを共有できると判断できれば採用する」。ビジョンを伝えるために面接は1・5~2時間ほどの時間をかける。篠田氏が徹底的に説明するからだ。「カネではなくビジョンや思いを共有できれば、どんな苦境でも固い絆で結ばれ乗り切っていけるから」。
プロフィール
篠田 庸介
(しのだ ようすけ)1968年4月、東京生まれ。89年、東京工科大学機械制御工学科中退。その後、総合卸売商社、CG機器販売会社などの設立などに参画。05年11月、ヘッドウォータース設立。代表取締役に就任。