大手メーカーでHDDや光ディスクの事業を手がける部門で業務に従事していた時のこと。「HDDには物理学や航空力学など、さまざまな知恵が入っている」ことを知った。その魅力に惹かれ、「自分の可能性を試したい」と、専業メーカーへの入社を決断した。
マーケティングは、「顧客の『なぜ?』を解決することが重要」と胆に銘じている。だから、「取り扱う製品について、分かりやすく、的確なメッセージをいかに広く訴求できるか」が決め手という。
もともとは、セールス担当者として日本シーゲイトに入社した。半年後、営業の立場から、アプリケーションにフォーカスしたHDDの新市場に参入するための大規模なプロジェクトを立案する。このプロジェクトを米国本社が認め、アジア全体で日本法人を支援する体制が整う。05年8月のことだ。結果は吉と出た。このことが、今も新規市場を開拓するマーケティング手法として最大限に生かされている。日本シーゲイトは、HDDメーカーとして業界で高い知名度を持つ。そのせいか、新たに開拓する市場の余地は小さいといえるだろう。しかし、「まだまだ開拓すべきところは多い」とみている。この自信に満ち溢れた言葉は、近いうちに形となって現れる見込みだ。
IT関連の調査会社への入社が、彼女がIT業界の道を辿ることになったきっかけとなった。それまでは、経済コメンテータの事務所や音楽教室のピアノ講師などを務めた。「音大出身だから、普通は音楽関連の業界ですよね」と笑う。実際、幼い頃からその道を歩むと思っていた。しかし、「父がエンジニアだったので、技術的なことが好きだったのかも」。IT業界へは、進むべくして進んだのだ。さまざまな業界で積んだ経験は、これからもマーケティング活動に生き続けるに違いない。(文中敬称略)
取材・文/佐相彰彦
写真/ミワタダシ
プロフィール
飯田 容子
(いいだ ようこ) 1963年、東京都生まれ。86年3月、東京音楽大学卒業。その後は海外留学やテレビコメンテータの事務所、音楽教室のピアノ講師などを経験する。97年以降、IT関連の外資系調査会社やベンチャー企業、国内の大手メーカーなどを経て、04年8月に日本シーゲイトに入社し、セールスを担当。07年1月、シニアマネージャーとして、チャネル/OEMセールスとマーケティングを兼務する。08年1月、マーケティングシニアマネージャーに就任。現在に至る。