「常に10年先を見据える」。坂憲一のモットーだ。24歳で社会人としてスタートした際に「人生計画を立てた」という。抱いた野心は、20代で独立することだった。
まずは、派遣会社のベンチャーセーフネットで営業のノウハウを学んだ。その後、26歳の時に米国製紙業界の大手AveryDennison社の日本国内総販売元としてノベックスジャパンを設立した。この起業は、「力試し」だった。力試しとは、「右も左も分からないが、とにかく結果を出す」こと。経営者として資金調達や経理業務などをこなしたほか、プリンタラベルを商材に全国で販売網を構築。3年間で年商1億円規模の会社に育て上げた。
次は「挑戦」という意識でテックリンクを設立。坂にとって、「挑戦とは勝算のあること」だった。ただ、設立当初は、「顧客が聞く耳をもってくれなかった。数か月間、売り上げゼロが続いた。やっと売り上げが立ったと思えば、たったの1万3000円」と、苦笑しながらその当時を振り返る。そうこうするうちに、設立当初から進めていた大学ベンチャーとの共同開発で、セキュリティ製品「メールタンク」が誕生。設立から2年目で右肩上がりの軌道に乗った。先行き不透明な市況感の現在でも収益を確保している。
テックリンクは創業から6年目を迎えている。設立時に10年計画を策定、折り返し地点にいるわけだ。これまでの5年間は、「メーカーになる」ために自社製品の拡充に力を注いだ。今後も開発を強化し続けていき、「2013年をめどに上場を目指している」。業績は伸び続けるが、「大幅な増員など、会社規模を拡大することは考えていない」。今、在籍する社員は、「意思を共有するスタッフ」だからだそうだ。上場という目標の達成に向け、すべての社員が一心不乱に突き進んでいる様子がうかがえる。(文中敬称略)
プロフィール
坂 憲一
(さか けんいち) 1974年11月、大阪府生まれ。ベンチャーセーフネットの営業職を経て、大手製紙メーカーの米AveryDennison社の日本国内総販売元としてノベックスジャパンを設立、取締役COOを務める。03年9月にテックリンクを設立し、代表取締役CEOに就任。現在に至る。