NECシステムテクノロジーの門松康樹は、スマートデバイス活用ビジネスの推進役を果たす技術者である。Android OSを搭載したタブレット端末で、オフィスの外でもパソコン用の業務アプリケーションソフトを使うことができるソフトウェアを開発した。「ユーザーはこれまで蓄積してきたパソコン用の業務アプリ資産をスマートデバイスでも活用できる」と胸を張る。
スマートデバイスの業務用途での活用が本格化するなか、決定的に不足していたのがスマートデバイス上で動く業務アプリの品揃えである。これを解決する方法は二つ。スマートデバイス向けに業務アプリをつくり直すか、リモートでパソコン用の既存の業務アプリを呼び出すかだ。SIerとしては、両方のニーズを満たす必要があるが、門松は「パソコン用の業務アプリを活用するプラットフォームは自らが開発すべき」と、手を挙げた。
しかし、意外にも会社の反応は鈍かった。リモートでパソコンのデスクトップを呼び出す類似ソフトは、すでに複数の市販品があったからだ。門松は事業部の予算と有志らでプロトタイプを開発。半透明のキーボードやマウスを独自に考案し、従来の不透明なキーボード表示時にタブレットの画面が半分ほど隠れる現象を改善。ソフトウェアマウスによって、マウスでの操作を前提にしたパソコン用アプリの操作性も高めた。特許も出願した。「次はバーコードリーダーなどの周辺機器も動かせるようにする」と機能拡張に意欲を示す。
こうした取り組みが会社を動かして、2012年10月、同社の戦略事業として「スマートデバイス・ソリューションセンター」が立ち上がった。有志の情熱が会社全体のスマートビジネス拡大の気運を高めたのだ。(文中敬称略)
プロフィール
門松 康樹
門松 康樹(かどまつ やすき)
1964年、兵庫県生まれ。87年、関西大学文学部卒業。同年、神戸日本電気ソフトウェア(現NECシステムテクノロジー)入社。第一ソフトウェア事業部に所属し、スマートデバイス向けリモートデスクトップ製品の企画、開発に従事。