モバイル端末用のアプリケーション開発ができるプラットフォーム「Monaca」をシステムインテグレータ(SIer)に売り込み、新規事業を本格的に立ち上げることが塚田亮一のミッションだ。塚田は、2年ほど前、当時はエンジニアとデザイナーしかいなかったアシアルに入社した。ベンチャー企業の上場支援に携わった前職で磨いた腕を振るい、“技術屋”のアシアルに、製品の販売をビジネスとして展開する意識を根づかせた。ウェブ用言語である「HTML5」のコミュニティに入り込んで、「Monaca」のマーケティング活動に力を入れたおかげで、登録した技術者は6万人以上に達した。App StoreやGoogle Playで、「Monaca」を使って開発したアプリが日増しに増えている。今のところはコンシューマ向けのものが多いが、今後は、SIerとタッグを組んで需要が旺盛な法人分野を開拓し、成長につなげる。
SIerに接近し、信頼関係をつくるために活用するのは、大好物である餃子に関する豊富な知識だ。日本有数の餃子関連情報サイト「東京餃子通信」の編集長を務め、テレビ番組で審査員として餃子の味を検証する。「餃子がきらいな人はほとんどいない。商談では、餃子ネタで話が弾み、相手がすぐに打ち解けてくれる」と塚田。先日、あるSIerの役員に、おいしい餃子が食べられる店を勧めたところ、まるでそのお礼のごとく、2日後にはそのSIerから仕事の依頼を受けたそうだ。塚田は、世界の展示会を回って「Monaca」を訴求するついでに各国の餃子情報を収集し、サイトで紹介する。ウェブサイト運用はどんなものかを知りたいとして立ち上げた「東京餃子通信」だが、その編集長活動をうまく本業に生かしている。(文中敬称略)
プロフィール
塚田 亮一
塚田 亮一(つかだ りょういち)
1974年生まれ。2001年、慶應義塾大学大学院を修了後、ベンチャーキャピタルの日本テクノロジーベンチャーパートナーズに入り、ベンチャー企業の上場支援に携わる。12年4月、アシアルに入社し、取締役として、モバイルアプリケーション開発プラットフォーム「Monaca」の事業化を担当。仕事のかたわら、餃子関連情報サイト「東京餃子通信」を運用する。