和田克之はボート歴19年。現在は母校・学習院大学漕艇部で監督を務める。現役時代のポジションは「ストローク」。船尾の最も近くに座り、漕手全員がストロークのオールの動きを見て同じ動きをするため、一定のリズムで漕ぐリズム感と体力が求められる重要な役割だ。
ボート選手としては小柄だった和田だが、大学入学当初は、高校時代に競技を始め各ポジションをこなした経験を武器に、体格差があっても、大学入学後に始めた多くの選手には負けなしの状態だった。
しかし、2年になると他の選手も力をつけてくる。ある時、記録順に出場メンバーが選抜されていくなかで、和田はギリギリで選ばれたものの、瀬戸際まできたという現実に直面した。「チームに対して自分のできる役割は何だろう」。考えた末に見出したのが、ストロークのポジションだ。「小柄だったが身長の割に腕が長く、これが生かせると思った。リズム感や体力は鍛えれば何とかなるし、経験もある」。自分の役割を認識した和田は以降、ここ一本で練習を積み、チームとして全日本大学選手権で8位という結果を残した。
トレンドマイクロ入社後は、PCメーカー向けOEM営業に携わり、現在はコンシューマ向けIoTセキュリティ対策製品のプロダクトマネジメントを担当する。業務に違いはあれど、共通するのは自らが企画や販売したものが受け入れられて、「かたちになる喜び」だという。仕事でも大切にするのは、自らが担う役割だ。「歴史の浅い製品なので、チーム内でもいろんなアイデアが出てくる。チームをまとめる立場として、IoTを守るという大きな方向性からはぶれず、みんなが同じ方向を向いていけるようにしている」と笑顔をみせる。(敬称略)
プロフィール
和田克之
(わだ かつゆき)
1983年11月、千葉県生まれ。2006年に学習院大学経済学部経営学科を卒業後、トレンドマイクロに入社。PCメーカー向けセキュリティソフトウェアのOEM営業に従事。11年10月、マーケティング部に異動。現在、16年12月に提供を開始した「ウイルスバスター for Home Network」のプロダクトマネジメントを担当する。プライベートでは、母校・学習院大学漕艇部の監督を務める。