
子どものころ、張燕昆は数学の面白さにのめりこんだ。難しい問題に挑戦し、解法を考えることが何よりも楽しかった。将来の夢は数学者になることだったが、現在の職業はITエンジニア。夢は現実にならなかったが、「今はITエンジニアになれてよかった」と笑う。
地元は雲南省昆明市で、高校までは成績上位に名を連ねていた。厳しい大学受験を突破し、中国トップレベルの浙江大学に入学した後、待っていたのは挫折だった。「周りの人たちがとても優秀で、自分では数学者になれないと思った」。学者を諦めた時、数学の理念が活用されているITに興味を持った。「夢が現実にならないこともあるが、夢があったからこそITに出会うことができた」と振り返る。
社会に出た後は、一貫してIT業界でエンジニア畑を歩んできた。大手外資企業で経験を積んだ後、自動車向けソリューションを提供する中国の新興企業・斑馬に入社し、画像認識や顔認識技術の研究開発に取り組んでいる。大手外資から中国の新興企業に移った理由は「昔は外資企業の方が技術的に進んでいたが、今は逆に中国の若い企業に勢いがある」と感じたからだ。
趣味は水泳。忙しくても、週に2回はプールに行き、心身を鍛える。休日は、家族と過ごす時間を大切にしている。最近、中国のIT業界で問題視されている「996」と呼ばれる過酷な働き方に対しては「あってはならないこと」と反対の立場だ。
将来、独立して経営者になるつもりはなく、別の業界に移るつもりもない。IT業界は移り変わりが激しいが、一人のITエンジニアとして、「自分の技術を磨き続けたいという思いは、これからも変わらない」と確信している。(敬称略)
プロフィール
張燕昆
(Yankun Zhang)
1973年9月、中国雲南省昆明市生まれ。浙江大学卒。北京控制工程研究所で修士号を取得した後、上海交通大学でモデル識別とスマートシステムについて研究し、博士号を取得。独ボッシュの首席エンジニアや米インテル アジア太平洋地域研究センターのコンピュータービジョン設計者などを務め、2016年5月から現職。