イオン発生機もBCPに IT商材ではないが、事業継続関連の製品としてSMBの注目を集めている製品に「プラズマクラスターイオン発生機」がある。ダイワボウ情報システムは、「ウェブ経由で販売が伸びている」(猪狩部長)という。ソフトバンクBBでも、「ニーズは高まっている。関連商材として提案していく」(友部長)方針を示す。
SMBは従業員数が少ないので、社内で新型インフルエンザなどが発生した場合、感染者が少数であっても業務に大きな支障をきたす。プラズマクラスターイオン発生機は、プラスとマイナスのイオンをプラズマ放電によって放出し、浮遊するカビ菌やウイルスを空中で分解・除去する。SMBでは新型インフルエンザの「予防」のために購入しているようだ。
DRビジネス
クラウド化で転機到来
収益モデルの変革が進む 遠隔地のデータセンター(DC)でデータをバックアップするDRビジネスが転機を迎えている。DCのクラウドコンピューティング化により、場所の制約が大幅に緩和されるという事情があるからだ。
次世代DCの多くは、複数のDCを仮想的に統合するアーキテクチャを採用している。最新の仮想化技術を駆使することで、全国に点在するDCを一つの管理画面から統合的に管理できる。こうした技術で、物理的に離れた場所へのデータ移行が容易になった。ただ、DR(災害復旧)対策をビジネスとしていたハードベンダーやDC事業者にとっては不利になる。DR用の設備を抱えていれば、「設備を持たない場合に比べて1.5倍以上の売り上げが立っていた」(DC事業者幹部)という。サーバーやストレージ、ネットワーク機器、ソフトウェアなどすべて1.5倍売れるという旨味のある商売だったわけだ。
しかし、クラウド時代になれば、そうはいかない。ハードウェアなどのIT資産はすべてDC事業者が所有し、ユーザーは利用するだけ。複数のユーザーがIT資産を共有するケースも増え、DRのあり方も必然的に変わってくる。ユーザー企業にしてみれば、利用した分の費用さえ支払えばいいわけで、普段使わないDRについてはデータバックアップ用の必要最小限のコストで済む。災害発生時には、必要なITリソースを別のクラウドから随時調達する。これがクラウド時代のDRの本質である。
一方、DC事業者は、あらかじめ地方のDCにIT資産を確保するキャパシティを持つ必要が出てくる。普段は別のサービスで使っていても、災害発生時にDRとして活用するなど柔軟性のある運用が欠かせない。従来のようにハードやソフトの資産を顧客に売るわけではないので、当然ながら1.5倍の費用請求は困難。DC事業者は、災害への対応時間や、バックアップの頻度など細かなサービスメニューを用意し、「顧客の求めるサービスレベルに応じた課金」(別のDC事業者)を行うことで顧客をつなぎとめる。
クラウド時代では、これまでのDCビジネスで行ってきた“コスト積み上げ型”のDRは通用しにくい。サービスレベルに応じた新しい料金体系への移行、さらにはクラウド型DCやDR運用の自動化、マルチユース化などで、内部的なコスト削減による収益力の向上が強く求められることになるのだ。
バックアップ製品
災害よりもシステム障害で
ガイドラインで需要を開拓 CDP(継続データ保護)関連製品メーカーのファルコンストア・ジャパンと販社のネクスト・イットでは、中小企業によるBCP(事業継続計画)市場の盛り上がりに伴い、リアルタイムバックアップを実現する製品として、CDPがクローズアップされるとみている。
ファルコンストア製のCDPは、他社製品と比べて高速なバックアップやリストアが可能。ファルコンストア・ジャパンの山中義晴社長は、「市場に出回っているバックアップソフトの大半は、20年前のアーキテクチャで開発されている」と指摘する。加えて、「バックアップを安価に実現できるものの、リストアに膨大な時間がかかる」ともいう。
事業継続といえば、地震などの災害から事業を保護するというイメージがあるが、「実際は、災害よりシステム障害が大半。サーバーやストレージは5年に1度の割合で壊れるので、BCPには高速リストアが可能なCDPが有効だ」(山中社長)とアピールする。
最近では、中小企業庁や金融庁が公開しているBCP策定のガイドラインをもとに、SMBもBCPの策定を求められるようになった。ファルコンストアの製品をベースに、ネクスト・イットでは価格を54万8000円とリーズナブルに設定したCDPソフトの「Z-BYS(ジービス)ES」を提供。この製品を武器に、SMBのBCP策定を促進している。
また、同製品をエントリーモデルに位置づけており、機能が充実しているファルコンストアのCDPソフトにアップグレードさせることも狙っている。
在宅勤務関連システム
UCでパンデミックに対応
景気回復の中核か!? 新型インフルエンザの蔓延により、パンデミックへの対応がクローズアップされている。SIerのなかには、在宅勤務などワークスタイルの変革が可能なUC(ユニファイド・コミュニケーション)を、パンデミック対策を含めた事業継続ソリューションの観点で提案するケースが出てきている。
SIer大手の富士通ビジネスシステム(FJB)では、1年ほど前からUC事業を本格化。マイクロソフトのUC関連ソフトを活用した製品・サービスで、大企業からSMBまでカバーできるメニューを体系化し、「FJB UCソリューション」と名づけて販売に力を注いでいる。
UCは、自宅での勤務などワークスタイルの多様化を下支えするIT基盤として関心が集まった分野だ。出張費の削減や生産性向上といった利点があるほか、万一の事故が発生しても自宅などオフィス以外でも仕事ができ、業務を継続できるメリットがある。そのため、事業を継続させるための仕組み・システムとしてUC関連の製品・サービスを求める企業が増えている。
FJBでは、ユーザー企業のUC構築にあたってコンサルティングから保守・運用までをワンストップで提供する8種類のメニューを揃え、拡販を図っている。
具体的には、ウェブ会議システムやIM(インスタント・メッセージング)構築サービスなどを用意した。SMBをメインターゲットとするSIerが、UCで豊富なメニューを体系化するのは稀だ。
あるサーバーメーカーのマーケティング担当者は、「昨年はUCソリューションを切り口にサーバー拡販のシナリオを作成したが、景気後退の影響を受けて鳴かず飛ばずに終わった」と口にする。ただ、「UCの潜在需要は依然として高い」とみている。景気が回復した時、旬のソリューションとしてUCの需要が増えることを期待しており、虎視眈々とその時を待っている。
リモート監視サービス
遠隔操作でトラブルを回避
DC化で監視サービスの需要増へ ITシステムやネットワークインフラのリモート監視が、事業継続関連のサービスとして注目を集めている。最近は、サーバー統合などユーザー企業による1拠点へのシステム集約やDC化で、一段と需要が増える機運が高まっている。そこで、リモート監視サービスを拡充するインテグレータが現れ始めた。
ネットワンシステムズでは、DCを活用してSaaSやPaaSなどを提供しようとする通信事業者などSP(サービスプロバイダ)向けに、ネットワークを中心としたインフラ構築に力を注いでいる。その一環として、検証センター「XOC(エキスパート・オペレーション・センター」を使ったリモート監視サービスの拡充を図っている。これまではネットワークが停止したときのアラート通知が主流だったが、最近ではサーバーやストレージまでを網羅。吉野孝行社長は、「次世代DC事業を拡大するためには、インテグレーション力だけでなく、付随したサービスも強化しなければならない」としている。
インフラ構築のプラットフォーム事業は、次世代DC案件を中心に、昨年度(09年3月期)の売上高として前年度比83%増を記録。これには、リモート監視サービスが大きく寄与している。吉野社長は、「止まらないシステムやネットワークの実現に向け、SaaSやPaaSなどを提供する側にとっては、インフラのトラブルを迅速に処理するための準備がますます必要になる。こうした企業に対して、当社はプラットフォームの観点から支援する」と方針を語る。主流になるといわれているクラウドコンピューティング時代を見据え、ネットワンシステムズは顧客企業の事後継続を実現するサービスを創造していく。