スイッチやルータなどを中心にネットワーク関連業界の再編が急速に進んでいる。ネットワークインフラ側からコンピュータシステムを網羅したビジネスを手がけようとするメーカーも現れてきた。メーカーは、拡販を狙ううえで、どのような商流を描いているのか。また、このような動きはインテグレータやディストリビュータにどのような影響を及ぼすのか。メーカーをはじめ、インテグレータやディストリビュータの動きを探った。
メーカー編 M&Aや協業強化で新領域へ
クラウド時代で主導権を握る
ワールドワイドに目を向ければ、ネットワーク関連機器メーカーがM&A(企業の合併・買収)に走ったり、コンピュータメーカーとの協業を強化して新領域に踏み出そうとする動きが激しくなってきていることが分かる。ネットワークインフラとコンピュータシステムの一貫提供体制を整備することで、クラウド時代のインフラ構築で主導権を握ろうとしているのだ。
SIとNIの融合で業界変革へ ネットワーク業界の巨人であるシスコシステムズ(シスコ)は今年春、サーバーとネットワーク、ストレージを網羅したプラットフォームの統合化に踏み切ることを発表した。自社ブランドのブレードサーバーを開発し、今年後半に「ユニファイドコンピューティングシステム(UCS)」という名称で提供を開始する。ネットワーク機器市場の最大手メーカーがサーバー市場に一石を投じるということで大きな話題となった。さらに、SIとNIの両方を手がける販社を獲得することでも注目を集めている。
「UCS」の提供で印象的なのは、さまざまな分野でトップレベルのメーカーやインテグレータとの間に、戦略的なパートナーシップを構築したことだ。メーカーとしてサーバーCPUのインテル、ストレージ専業メーカーのEMCジャパン、仮想化でヴィエムウェアやマイクロソフトなど。インテグレータでは、伊藤忠テクノソリューションズやネットワンシステムズ、日本ユニシスなどが名乗りを挙げている。
シスコがサーバー領域に参入することになった理由について、同社のエザード・オーバービーク社長兼CEOは、「他社のサーバーは、アーキテクチャがまったく変わっていない。(当社は)ネットワークサイドからサーバーをインフラの一部として提供できる」と説明する。平井康文・副社長(エンタープライズ&コマーシャル事業担当)は、「サーバーとネットワークを網羅したインフラが重要となるので、販売パートナーとの関係を一段と深めなければならない」とアピール。シスコがSIとNIの融合で変革を進めるというわけだ。
ネットワークOSのOEMで提携
シスコが自社でコンピュータとネットワークの両方の製品を揃える一方、米ジュニパーネットワークスはワールドワイドで米IBMとのOEM(相手先ブランドでの製品供給)契約を締結した。ジュニパーのOS「JUNOS」などネットワーク技術を搭載したスイッチを、今後はジュニパーだけでなくIBMも提供していくことになる。
今回の提携は、IBM製のサーバーとストレージ、ジュニパーの技術を搭載したスイッチを組み合わせることで、次世代データセンター(DC)向けビジネスの拡大を狙いとしている。米ジュニパーネットワークスのデビッド・イェン上級副社長兼データセンター・ビジネスグループ統括マネージャーは、「市場でリーダー的な存在である当社とIBMが協業することで、データセンターのシステムリプレースで信頼性や拡張性、簡素化などの面でユーザー企業に価値をアピールできる」と自信をみせている。
また、サポート面でもジュニパーがIBMをバックアップするという。つまり、日本市場で日本IBMからスイッチが提供されることになった際も、ジュニパー日本法人が日本IBMを支援することになるわけだ。日本IBMにとっては、サーバーストレージを担ぐ販社に対してスイッチも組み合わせて売ってもらえることになり、しかもジュニパーの支援も付いてくる。「まずは、IBM製品と当社製品の両方を販売しているパートナーが提供していくことになる」(ジュニパー日本法人の飯島陽子・フィールドマーケティング本部統括マネージャー)としており、シスコと同様にSIとNIの両方を手がけることが可能なインテグレータとのパートナーシップを深める。
FCoEで統合インフラを提供
イーサネットスイッチメーカーとの統合で、ストレージの新接続方式「FCoE(ファイバー・チャネル・オーバー・イーサネット)」市場で主導権を握ろうとしているのは、昨年末に米ファウンドリーネットワークスの買収を果たした米ブロケードコミュニケーションズシステムズだ。イーサネットスイッチメーカーの買収で、ネットワーク機器市場の覇者になることを目指しており、同マーケットでトップの位置にあるシスコの対抗勢力として勝負を挑む。米国本社でワールドワイドセールス担当のイアン・ホワイティング・シニアバイスプレジデントは、「市場をけん引するリーダー的な役割を果たす」方針を示す。
日本では、今年5月に組織を統合。社長を務める青葉雅和氏は、シスコで取締役常務執行役員を務めたほか、チャネル戦略などを手がけた経験をもっており、シスコの戦略や販売パートナーに対するノウハウを熟知している。青葉社長は、「シスコが高い壁であることは承知している。しかし、独自の切り口で市場シェアを高める」としている。ポイントは、「販売パートナーとの協業強化」と訴える。同社のFCスイッチとイーサネットスイッチを組み合わせたネットワークインフラの提供に対して、「複数の販売パートナーから両製品とも売ることをコミットしてもらっている」という。製品・サービスの提供拡大に向け、今後も販売代理店網を整えていく方針だ。
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