関東圏
調剤薬局向けソフトで全国制覇へ
ASP型連絡網でユーザー4万人獲得
長野県上田市に本社を置くソフト開発企業のズーは、専門的な業種向けの自社開発パッケージソフトで存在感を示している。それが、調剤薬局向けレセプトオンラインシステム「源内」だ。北は北海道から南は九州まで約30都道府県でユーザーを獲得。全国展開に成功している。
上田市は、医療機関と薬局の分業を推進する「モデル都市」に指定されたことがあり、全国に比べて調剤薬局が多い地域。そこに着眼したズーは、1986年の創業間もない頃、調剤薬局向けの業務ソフト開発に取り組んだ。「長年の実績と業務にマッチした機能が評価され、全国にユーザーが広まった」(宮島仁一社長)と、さらなる拡大に自信をみせる。
「源内」が成功したのは、品質の高さだけではない。ユニークな流通の仕組みもその一因だ。「源内」はパッケージソフトでありながら、販社経由の販売がほとんどない。調剤薬局に専用機器を販売したり、業務代行を手がけたりする企業が販社となっているのだ。「薬局に頻繁に顔を出す業者のほうが販売パートナーとしては適切」(宮島社長)という考えからだ。独特の販売方法と実績、ユーザー企業の業務に適した製品づくりで、「“長野発”の全国に通用するソフト」を実現した。
長野県佐久市に本社を置くパスカルは1984年設立の老舗ソフト開発企業だが、同業他社から受託する開発業務と、ユーザー企業から元請けとして開発する仕事が半分ずつの割合だ。ユーザー企業や、元請けベンダーの要望に応じたスクラッチ開発案件が大半を占めるなか、パスカルは3年前に独自サービスを開始。それが緊急連絡網サービス「オクレンジャー」だ。
自社で保有・運用するデータセンターを活用し、緊急時に携帯電話などに連絡できる連絡網サービス。ASP型で、「メールアドレスを活用せずに連絡が可能」(井上隆・代表取締役)という特許技術を活用したものである。サービス開始後、教育機関に対して着実に実績を積み上げ、「佐久市内の教育機関のほぼすべてに導入された」(井上代表取締役)という。地元のみならず、クチコミで広まったユーザーを全国に抱え、約4万人が利用するヒットサービスに成長した。

ズーが自社開発する調剤薬局向けレセプトシステム「源内」の操作画面
中部圏
RIAやアプリ基盤生かす
「intra-mart」で生産性を向上
中部圏のSIerでは、リッチインターネットアプリケーション(RIA)やアプリケーションフレームワーク基盤、ソフトのコアパッケージなどで受注を伸ばす動きが目立つ。
岐阜県のホクコウは、アドビシステムズのRIA基盤「AIR」を全面的に採用。従来の古いクライアント/サーバーシステム(C/S)のリプレース需要を着実に掴んでいる。地域経済が伸び悩むなか、顧客企業はIT投資の絞り込みを進める。こうしたなかで、従来方式のC/Sと大差ないシステム提案をしても、「顧客の関心を得るのは難しい」(北洞順造社長)ため、3年ほど前から事業化したのがRIAによるC/Sリプレースである。
RIAは、クライアントパソコンのOSへの依存度が低い。比較的古いパソコンでも動作する。IT機材を少しでも長く使い、コストも節約したいユーザー企業のニーズに合致し、順調に引き合いが伸びている。ホクコウでは、アパレル関連や大学など教育機関向けの業務システムを、順次AIRベースにつくり換えることを積極的に提案。立て続けに案件が決まったため、今年度(2010年6月期)売上高は、厳しい受注環境のなか前年度比10%程度伸びる見込みだ。
富山県のユーコムは、NTTデータイントラマートのアプリケーションフレームワーク基盤「intra-mart」をベースに業務アプリケーション開発の生産性向上に取り組む。NTTデータイントラマートにSEを派遣して技術を習得したり、自社内で使う勤怠管理システムを「intra-mart」上で開発したりするなどの経験を積んだ。「北陸で『intra-mart』といえば当社の名前が挙がるよう知名度を高める」(今牧一盛社長)と、意欲を示す。
愛知県のトーテックアメニティは、既存の自治体向け基幹業務システムを大幅に刷新。中核となるソフトモジュールを集約したコアパッケージ「G-COAS」をベースに、自治体向けの営業に力を入れる。民需に勢いがないなか、官公需を積極的に取り組む切り札として「G-COAS」を位置づけており、「個別に開発するより、納期や品質を大幅に高められる」(川北敏久取締役)と、コアパッケージ方式の利点を話す。
関西圏
iPhone向けアプリ、先行開発で優位に
中国市場に活路見出すベンダーも
スマートフォン向けアプリケーションの開発・販売で、ひと旗揚げようとしている地方ベンダーは少なくない。京都府のスリーエースは、2008年末から「iPhone」向け業務アプリケーションの開発に取り組んできた。「Android」向けの開発にも着手しており、スマートフォン向けアプリケーションの開発で、9名からなる専属技術者のチームを組織している。
同社のイチ押しは、名刺ビューア「BC Holder」で、メディアドライブの名刺管理ソフト「やさしく名刺ファイリング PRO v.10.0」と連携しており、名刺データを「iPhone/iPod touch」に転送して閲覧できる。現在は、美容室の客の顔写真を「iPhone」からPCのデータベースに取り込み、来店頻度などを記入した“カルテ”を作成するアプリケーションを開発中だ。
井上太市郎代表取締役のスマートフォン向けアプリケーションに対する期待は大きい。製造業向けシステムの受注は、不景気の影響で09年に前年比30%程度の落ち込んだ。その“穴”を埋める意味合いもあるという。
一方、大阪府のドクターシュミットは、「電気設備月次点検報告書作成システム」のほか、在庫管理や配置販売管理など用途に応じなどさまざまなアプリケーションを用意する。
「電気設備月次点検報告書作成システム」は、作業中に手がふさがっている時にも、音声入力で作業の効率化を図ることができる。同社が販売するのはPDA(携帯情報端末)向けだが、コラボルタをパートナー企業に据え、スマートフォン向けアプリケーションとしても販売している。ただ、課題もある。田中忠直代表取締役は、「騒音に弱いうえ、認識率が低く、商談は多いけれどもなかなか売れない」と嘆く。業務ソフトウェアベンダーにも提案し、精力的にチャネル開拓を進めるという。
海外市場の開拓を進めるベンダーもある。滋賀県のキステムだ。同社は、独自の商材として、コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)や教育機関向けサービス、水中顕微鏡システムを展開している。「携帯電話が得意」(井門一美社長)という強みを生かし、中国向けに携帯電話のコンテンツ提供。ユーザーの対象は、日本文化や経済に興味をもつ中国人で、日本のコミックや経済情報を配信している。そのほか、政府向けのアプリケーション開発にも従事。中国発信の日本人向け観光サイトの立ち上げにかかわっている。

スリーエースのiPhoneアプリのポータルサイト「Apppps!!」
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