中国・四国圏
安価な遠隔監視でニーズに応える
地方ならではの車輌予約システムも
愛媛県の松山電子計算センターは、医療と流通分野を得意とし、富士通の販売店として活躍する。医療関連ソリューションでは、自社開発パッケージで専門小売業向けの商品管理システム「現場主義」とFAXやコールセンターで受注する産直通販向けの「田舎主義」を提供。両パッケージは富士通系列を中心に全国へ導入が波及している。
医療、流通ともに事業体の変革が迫られており、「ビジネスの変化に応じ商機が段階的に訪れる」(山内博司社長)とみる。
同じく愛媛県に本拠を置くパルソフトウェアサービスでは、顧客の悩みを解決すべく、経済産業省の助成金を受けて製品を開発した。それが、FOMAなど安価な携帯回線を利用した遠隔監視装置「BeagleOne-A」と「BeagleOne-D」だ。同社の主要顧客である、地元の浄化槽設備業者や食品加工場の業務内容にヒントを得て開発したものである。
工場ではライン設備やボイラーなどのチェックを1時間に1度、人手で行っているところが多い。これでは手間と時間がかる。両製品共通の機能は現場のセンサや機器類に接続し、警報や防犯センサの信号をキャッチすると設備保守の担当者などにeメールを送信する点にある。顧客視点で開発された製品で、安価なので期待大だ。
広島県のソフトベンダーであるYuiコンピューティングでは、同社が開発したECO対応車両予約管理システム「DECO(デコ)」が、東広島市役所の公用車管理に採用されている。
「DECO」は地方自治体などの公用車の稼働状況を管理し、車両の配分を最適化する。利用者はブラウザから簡単に車両予約や変更などを行うことができる。その際、人事データと絡めて、権限に応じた車両予約を設定することも可能だ。車両利用後の運転日報に給油状況や走行距離を入力して車両の燃費を分析すれば、環境負荷の軽減に結びつくという優れモノだ。
九州圏
ツイッターで街起こしに貢献
HP作成とSEOなど運用支援に期待
「先端技術とサービスとITの導入が遅れている中小企業との橋渡しとなるソリューションが重要」と、福岡県のグローバルブレインズの森俊英社長は話す。同社はツイッターを使ったWebソリューションを独自に開発。福岡市の天神・大名地区で店舗の情報を閲覧できるサービス「Pokedig(大名なう)」を構築し、運用している。
iPhone用のWebアプリケーションを用いており、ユーザーはiPhoneを使って街の様子についてつぶやいたり、飲食店がおすすめメニューを告知するといった情報をリアルタイムで閲覧することができる。システムは地図と店舗情報の連動や顧客の来店情報管理、定期的な広告配信機能も備えている。
システムを活用した飲食店や衣料店などには「集客効果や街の活性化につながった」と好評で、こうしたソリューションのニーズは高いとみている。
同じく福岡県に本拠を置くエコー電子工業は、企業向けのホームページ作成、運営支援サービスに力を入れている。サービス自体の収益は高くないが、「ここを入口にしてシステムの構築につなげたり、新規顧客の開拓、既存のお客さんとつき合いを深めることができる」(柗本清人執行役員常務)と期待しているからだ。
サービスは、ホームページの制作のみならずSEOやアクセスログ解析、レポートの作成をはじめ、売り上げや問い合せ件数を増加させる施策まで手がけており、「他社よりも充実した内容」(柗本常務)と自信をみせている。

グローバルブレインズが開発した「Pokedig(大名なう)」のツイッターの画面
まとめ
従来から、地方の有力ベンダーでは、受託ソフトウェア開発事業を縮小し、粗利益の高い自社開発のソフトウェアを提供してきた。この経済不況の波を受け、価格要求が厳しいなかで育った安価で高品質な製品が、全国から注目を浴びている。
いまや、クラウド環境を構築すれば、全国への波及が容易になる時代。中国など海外展開を含め、地方ベンダー開発の製品の市場は拡大しつつある。
クラウド事業と並行して、スマートフォン向けビジネスも、旧オフコンディーラーが取り組む“新機軸”の領域だ。携帯端末会社などから出ているAPIを使い、製品に目新しさがあれば世界に進出でき、さらに早期に市場を獲得すれば、大きな先行者利益を得ることができる。
クラウドもスマートフォンも、ビジネス向けのアプリケーション開発は緒についたばかり。だが、オフコンやクライアント/サーバー型のシステム開発に比べて競合が少ない。地方のSIerは、生き残りをかけて新領域を探すことに必死になっている。脱受託ソフト開発の動きは、さらに加速することが予想される。