SIerの業績回復が鈍い。世の景気の動きに半年くらいのずれが生じるという“遅効性”があるといわれる情報サービス産業だが、一部に「構造的な問題」を危惧する声も聞かれる。こうしたなか、有力SIerは次々と業績回復に向けての新戦略を打ち出している。
いざ、海外へ
成長戦略を実行に移す
国内の事業環境は予想以上に厳しい──。SI業界トップのNTTデータ・山下徹社長は、2010年度上半期(10年4~9月期)業績を踏まえた感想を述べた。成熟した国内市場にとどまっていては、もはや現状以上の成長はできない。大手SIerは、海外進出を成長戦略の柱の一つとして位置づける。M&Aや得意技をグローバル規模で展開。強みを生かした成長戦略を描き、実行に移している。
“御三家”は軒並み苦戦  |
NTTデータ 山下徹社長 |
NTTデータは、連結子会社の拡大が貢献し、上期連結連結売上高は前年同期比0.2%増の5337億円を確保した。だが、受注高は同20.3%減の5493億円、営業利益に至っては24.1%減の253億円だった。これに伴って通期(11年3月期)の期初予想を、連結売上高の対予想値比で3.3%減の1兆1600億円、営業利益で16.7%減の750億円へと下方修正した。
SI業界の優等生、野村総合研究所(NRI)は、上期連結売上高で前年同期比2.9%減の1621億円、営業利益で同27.5%減の160億円。ITホールディングス(ITHD)は、年商470億円規模の準大手SIerソランをグループに加えたことから、上期連結売上高は同4.8%増の1540億円となったが、営業利益は19.6%減の46億円と、開発系SIer大手“御三家”が軒並み苦戦している様子がうかがえる。
情報サービス産業協会(JISA)が集計している経済産業省・特定サービス産業動態統計によれば、国内情報サービス業の売り上げは、今年7月まで14か月連続のマイナス成長。8月以降、若干もち直しつつあるが、一進一退に変わりはなく、今後も大幅な売り上げ増は期待できないというのが大勢の見方だ。
だが、大手SIerは決して手をこまねいているわけではない。次の成長戦略を描き、一部ではすでに実行に移しつつある。
グローバルデリバリー確立へ まず、大きく動いたのがNTTデータだ。米国の準大手SIer、Keane(キーン)を2010年末までをめどにグループ化することを発表。キーンは09年12月期の年商約7億8800万ドル(約654億円)、1万2500人ほどの社員を抱える有力SIerで、NTTデータは同社のグループ化で北米におけるビジネスの大幅な拡大を目指す。キーン買収に先立つ今年7月には、同じく米国中堅SIerのIntelligroup(インテリグループ、年商規模約1億4100万ドル=約117億円)を傘下に収めるなど、積極的なM&Aを展開している。
キーン、インテリグループのグループ化には、実はもう一つの狙いがある。インドでのソフトウェア開発パワーの獲得だ。キーン、インテリともに社員の約半数がインドで勤務しており、NTTデータはインドで両社合わせて約8000人分の開発リソースを手にしたことになる。インドで生産力と価格競争力を身につけ、欧米マーケットの最前線には海外戦略の主軸と位置づけるERP(基幹業務システム)のSAPを投入。欧米マーケットで受注して、インドで開発する“グローバル・デリバリー・モデル”を確立させる構想だ。
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