事例 1 ネットワーク構築
ブリティッシュ・テレコム
「人材への投資を惜しまない」
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BT中国 肖文総経理 |
経済成長とともに国際指向が進んだ中国では、ここ数年、中国からグローバルに向けて事業を展開しようとする地場企業が急増している。英国最大手のネットワークインテグレータ(NIer)のブリティッシュ・テレコム(BT)は、こうしたグローバル進出を図る中国企業に向けた国際ネットワーク構築の事業拡大を柱として、中国ビジネスを加速している。同社は、これまで、欧米系の企業を主要ターゲットとしてきたが、中国での長期的な事業成長を目指せば、地場企業との間で展開するビジネスが必要不可欠だと判断し、今年から地場企業を積極的に狙っていく戦略を選択した。
地場企業を狙うにあたってカギを握るのが、現地の事情に精通する人材だ。そこでBT中国の肖文総経理は、「これまでにない規模で営業スタッフを増やしていく」ことを方針に掲げ、増員に対する投資を拡大させている。今後2年間で行う投資は、中国における売り上げ規模がまだ小さい同社にとってかなりリスクが高いが、「市場の将来のポテンシャルから考えると、絶対に必要だ」(肖総経理)と断言する。
もう一つBT中国が重視するのは、現地パートナーとの強い連携だ。規制が厳しい中国では、ネットワーク運用や販売の多様な面で、パートナーとの関係が緊密であればあるほど、トラブルが避けられ、ビジネスを成功に導くことができる。肖総経理は、「中国は規制が多い。しかし、それを承知のうえで、多くの現地事業者と組むなどの施策を打てば、実際のところ、規制はビジネスにそれほど大きな影響を与えない」と、パートナーシップの重要性を語る。
事例 2 SaaS型ITサービス
ゾーホー
「コストパフォーマンスで差異化」
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ゾーホー中国 侯康寧総経理 |
中国で順調に事業を展開している欧米ITベンダーは、IBMやHP、BTなどの大手プレーヤーばかりではない。中堅企業の成功事例も数多い。IT管理サービスを提供する米・ゾーホーはその一例だ。2002年に中国へ進出し、北京と広州にオフィスを構える同社の中国法人は、来年中に中国西部に新しい拠点を設ける計画を進めている。
新拠点は、成都か西安に設立する予定。営業担当者1名とエンジニア1名の体制で、中国西部で同社の販売・運用パートナーを支援する役割を担う。新拠点の設立は、ITインフラが手薄な地場の中小企業に向けたSaaS型ITサービスを商材に、新規顧客を獲得するための基盤づくりを狙ったものだ。侯康寧総経理は、「西部の中小企業はコストが少額で済むSaaS型ITサービスの需要が大きいので、この市場を開拓すれば、将来、SaaS型ITサービスが当社の主要事業になってくる」という見込みを立てている。中国西部は大手でもITインフラが十分でない企業が多いとにらみ、中小を主要ターゲットとしながらも、大手企業の獲得も目指していく。
ITサービスの分野で最も意識する競合は、IBMやHPの大手。しかし、「彼らの製品は、中国の中小企業の観点からみれば、コストが高く、実際にほとんど使わない機能が多いという弱点がある。当社は、余分な機能を削ぎ落として主要機能に絞っている。だから、コストパフォーマンスにすぐれており、使いやすさと低価格が実現できている」(侯総経理)とアピールする。自社製品をターゲット企業のニーズに合致させることによって、大手ライバルとの差異化を図っている。
中国のセキュリティ市場
品質重視がビジネスチャンス  |
金山軟件 王東暉執行董事 |
欧米IT企業が中国で成功しているなかでも、シェア獲得のハードルが高いのが、セキュリティ市場だ。中国のセキュリティ市場は、同国内の有力ベンダーが多く、企業間の競争が非常に厳しいので、欧米系のセキュリティベンダーはこれまで大きなシェアを獲得することができずにいた。しかし、法人・個人ユーザーともセキュリティ製品の品質に関する意識が高まっていることを受け、ここにきて市場に食い込む動きを加速させている。
欧州市場で強いドイツのGデータは、今年5月に中国の現地法人を北京に設立し、2011年初頭をめどに、事業の本格的な立ち上げを目指している。同社は、欧米企業を当面の主要ターゲットに据え、現地の販売パートナーとの関係を強化しながら、中長期的に中国の地場企業も狙っていく構えだ。中国現地法人のマヌエル・フリース ステーション・チーフは、「市場がよい方向に向かっているので、これを追い風に、事業を成長させていく」と自信をみせる。
一方、中国の国内ベンダーは、Gデータなど欧米企業の動きに対し、シェアの維持・拡大に向けて新たな戦略を模索している。コンシューマ分野で最大手の金山軟件(Kingsoft)は、セキュリティのエントリー版を無償提供し、より包括的なPCの保護ができる有料のプレミアム・サービスを売り込むというビジネスモデルを推進している。王東暉執行董事は、「今年3月から、無料版でおよそ800万の新規ユーザーを獲得した。これからは有料版を積極的に訴求し、収益につなげていく」という方針を示している。
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