業界団体のコンピュータソフトウェア協会(CSAJ)中国ビジネス研究会の活動に大きな変化が起きている。研究会はこれまで、中国の技術者を活用して、ソフトウェアの開発コストを下げる取り組みなどを行ってきたが、今年に入ってからは中国市場へ自社ソフトを売り込む研究を本格化。研究会メンバーも昨年からほぼ倍増し、24社40人ほどが集まる。業界団体同士の交流も拡大させる見通しで、日本のパッケージソフトの売り込みに全力を挙げる。
 |
| CSAJで中国ビジネス研究会の主査を務める竹原司・ナレッジオートメーション社長 |
CSAJ中国ビジネス研究会が発足したのは2007年。開発人員の不足感が強かった時期でもあり、当初は、中国の技術者を雇用するための法的手続きや研修のあり方などを主なテーマとしていた。ところが、中国のIT市場が急拡大し、中国市場に自社のパッケージソフトを売り込みたいベンダーが相次いで研究会に参加。メンバーはここ1年でほぼ倍増した。活動の方向性も、「中国への自社パッケージソフトの売り込み」(研究会の竹原司主査=ナレッジオートメーション社長)へと180度転換することとなった。
しかし、単独での中国市場へのアプローチは難しい。そこで、中国ソフトウェア産業協会の中国軟件行業協会(CSIA)や、台湾の中国資訊軟体協会(CISA)など、同じ業界団体同士、ビジネス的な連携を促進する動きを活発化。中国のCSIAは、すでに情報サービス産業協会(JISA)と日中情報サービス産業懇談会などで連携しており、パッケージソフトベンダーが多く参加するCSAJとしても、CSIAとの関係強化を重視している。また、CSAJ会員のDBMaker Japanを通じて、同社親会社の台湾SYSCOM(凌群電脳)総経理が理事長を務める台湾CISAと、中国進出での共同歩調をとることが可能かどうかも検討する。
同じくCSAJ会員の長城コンサルティングが、中国最大級の製造業集積地帯にある江蘇省江陰市にオフィスを昨年設置。CSAJでは、09年9月に江陰市の視察ツアーを実施し、竹原主査をはじめ、日立情報システムズ、情報技術開発などのキーパーソンら10人余りが参加している。製造業向けのパッケージソフトをもつベンダーにとって、江陰市などが位置する工業ベルト地帯は巨大なマーケットそのもの。「メンバー同士が知恵を出し合いながら販路開拓に向けた研究を進める」(竹原主査)と、中国進出に意欲を示す。日中の業界団体やCSAJの会員同士の連携を、いかに密接に進めるかが中国ビジネス拡大のカギを握りそうだ。(安藤章司)