事例 3 データセンター運営
アチーボ
「支援制度が充実した太倉市で事業展開」
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アチーボ情報サービス 李晨社長 |
アジアでデータセンター(DC)コンサルティングに強い野村総合研究所(NRI)は、「ニューヨーク証券取引所に上場する中国の地場企業が増えており、上場に伴ってデータのバックアップなどが義務づけられるので、中国でDC建設の需要が高まっていく」(横井正紀上級コンサルタント)と分析する。ソフトウェア開発の米・アチーボの中国法人、SWLグループは、こうした時勢を読んで、今年10月に上海市近郊の江蘇省太倉市に国際アウトソーシングパークとデータセンター(DC)を開設した。
約10万m2の敷地面積をもつ国際アウトソーシングパークとDCの開所式には、太倉市の王剣鋒副市長を含め、市の関係者が多く集まり、懇親会の場でSWLグループのキーパーソンと交流した。アチーボがDCの建設地として太倉市を選んだのは、土地価格が安いことや上海市街に近いという地理的条件だけでなく、太倉市が外資系企業の活動を積極的に支援していることが重要なファクターだった。アチーボはこれから、市による補助金制度を活用し、所得税の免除や新卒社員のトレーニング費用をカバーするなどの特典を用意して、テナント企業を募集していく。
アチーボ情報サービスの李晨社長が太倉DCの訴求ポイントとしているのは、「外資系ならではの最新技術」だ。太倉DCは、中国で初めて水冷方式の冷却システムを採用し、年間約25%のエネルギー節約を実現。中国でも高まっているエコのニーズにいち早く対応している。

アチーボの国際アウトソーシングパークとDCの開所式
Epilogue
紹介した欧米企業に共通しているのが、中国での事業展開にあたって、現状のビジネスにとどまらず、いち早く新しい事業分野を探して、現地パートナーとともに積極的に事業化に取り組んでいく姿勢だ。中国で成功するために、判断力とスピードが求められる。日本のIT企業は、すぐれた製品をたくさんもっている。オフショア開発や日系向けサービスの限られた事業領域を超え、中国の地場企業を狙ったビジネスを本格化させるべき時がきている。