NEC
総合力を発揮、複合提案に強み
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| 吉泉康雄本部長 |
NECは、今から2年ほど前の09年4月に「プラットフォーム販売本部」という新部門を立ち上げている。この部門がx86サーバーの拡販部隊で、NECのシェアを下支えしている。「『サーバーを買ってください』ではまったく通用しない時代なので、販社にはサーバーを含んだソリューションパッケージを届けている。いかに無理なくユーザーに提案してもらえるようにするかが最も大事な要素だ」。吉泉康雄・プラットフォーム販売本部長は、こう力説する。
ソリューションを構成するには、パソコンとサーバーだけでは間に合わない。プラットフォーム販売本部は、それまでの製品ごとの縦割り組織を廃して、クライアント端末、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、そしてソフトといった情報システムの基盤(プラットフォーム)関連製品の拡販部隊を一つにまとめた。軋轢が必至の構造改革で、「最初は言葉も通じない状態」だったが、2年間で相乗効果が出始めている。具体的には、「仮想化」「シンクライアント」「バックアップ」などの五つのテーマに、さまざまな製品を組み合わせたソリューションパッケージを作成して販社に提案。その結果、サーバー統合にマッチするブレードサーバーは、昨年度に比べて30~40%増で推移している。これは、「サーバー10台程度を集約するニーズを取り込んでいる成果。主に販社経由で売れている」(本永実・同本部グループマネージャー)。
NECは、ソリューションパッケージの作成だけでなく、販売店の教育にもこだわる。ftサーバーと仮想化分野で、認定資格制度を推進中だが、2月からはストレージでも認定資格制度を始めた。ftと仮想化合計ですでに約1300人の技術者が育っている。それを今回ストレージにも横展開するわけだ。社内の営業担当者向け教育プログラムも、4月以降にパートナーへ移植する。これも従来の組織ではなし得なかった施策であり、プラットフォーム販売本部が発足した成果である。同本部の設置をきっかけに、NECは影を潜めていた総合力を発揮し始めており、販社の総合提案を支援している。
日本HP
価格競争力と豊富な製品ラインアップ
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| 橘一徳本部長 |
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の強みは、価格競争力と製品力だ。国内メーカーと異なり、日本HPには世界市場で販売できるインフラがあり、実績ももっている。部品調達力は他社よりもすぐれている。2010年には、他社よりも大幅に価格を引き下げたキャンペーンを数回打っており、コストパフォーマンスで圧倒する力がある。価格の優位性を前面に押し出した戦略は今後も継続されるはずで、販社にとってはソリューションの原価を下げる効果が見込める。
SMBに適した製品として日本HPの橘一徳・エンタープライズストレージ・サーバ事業統括ISSビジネス本部本部長が推すのは、タワー型の「HP ProLiant MicroServer」だ。高さ26.7×幅21.0×奥行き26.0cmのきょう体に、21.4dBという静音設計を特徴としており、価格は3万5700円という超低価格に設定している。「SOHOや中小企業をターゲットにしたモデルで、発売以来、絶好調。月ベースで倍々で伸びている」(橘本部長)と自信たっぷりだ。好調を受けて、日本HPでは年度末商戦に向けたキャンペーンをこのモデルで計画している。
x86サーバーのうち、情報システム室やデータセンターに設置するラック型モデルが需要の中心ではあるが、オフィス内に設置して部門内のみで利用するオフィスタワー型も成長分野だ。日本HPはこの分野にも商機があるとみる。部門内のファイルサーバー用など、小規模システムに適した製品で、特別な知識も必要ない。販社にとってはメインシステムというよりも、付加システムの一つとして提案できる材料である。
富士通
充実の教育と環境配慮を全面に
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| 芝本隆政プロジェクト部長 |
「世界で50万台売る」という元社長の大号令で息を吹き返し、シェアが上昇中の富士通は、パートナー支援策としてNEC同様に教育制度の充実を図っている。複数のトレーニングメニューを、パートナー支援部隊を通じて展開。なかでもユニークなのが、「ドアノック研修」と呼ばれるプログラムだ。パートナー企業が新規のユーザー企業などを訪問する際の「提案方法を指南する」(芝本隆政・プラットフォームビジネス推進本部PRIMERGYビジネス推進統括部プロジェクト部長)内容で、販売パートナーの営業スキル向上、新規案件の獲得増加に貢献している。製品の優位性や技術的内容が多かった教育プログラムのなかで、このドアノック研修は極めて異例だ。
そのうえで、パートナーがユーザー企業に提案しやすくするためのソリューションパッケージの充実に力を入れている。「PRIMERGY バリューモデル」がそれだ。「仮想化基盤モデル」など、各ソリューションに適したモデルとして何が適切かをひと目で分かるようにマッピングし、パートナーが製品を選びやすくしている。
パートナーを経由した間接販売で伸びているのが、ブレードサーバーだ。昨年11月に発表した中規模システム向けのブレードサーバー「BX400」が好調という。ブレードでは後発で、他社に遅れを取ったが、このモデルの投入で「SMBのサーバー統合ニーズに合致した提案をパートナーが展開できるようになった」(芝本プロジェクト部長)という。同氏は、「仮想システムへの移行、サーバー統合のニーズはまだまだある」と認識しており、「BX400」に全体の販売台数押し上げ効果を期待している。また、「製品ラインアップは他社よりも手薄」という認識もあり、来年度以降に製品数を増やす計画。「環境配慮、省スペース化ではまだまだ向上の余地がある。他社との差異化ポイントとなる」との考えで、エコを前面に押し出した製品開発・販売を従来以上に強める姿勢を示している。
デル
パートナー開拓から2年、組織再編へ
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| 木口弘代シニアマネージャー |
販売パートナーを活用した間接ビジネスでは最後発のデル。2年ほど前から間接販売ビジネスを強化し始め、パートナーの募集活動に力を入れている。木口弘代・SMBマーケティング本部シニアマネージャーエンタープライズブランドは、「他社に比べて整っていない部分はあると思うが、徐々にパートナー支援の内容も体制も整備できつつある」と実情を話す。「デルモデル」という直販一本槍の考えはまったく念頭に置いていない。
拡販に力を入れているのは、2ソケット以上のサーバーだ。木口シニアマネージャーは、「ネットサービス業者など、サービス提供するうえで情報システムが重要な経営基盤になっている企業は年商・従業員規模を問わず、サーバーを購入するケースが多い。この分野で伸びているのが2ソケット以上のモデル。この分野で、デルはコストパフォーマンスの高い機種を豊富に揃えている。スペックと価格を見比べてもらえれば、他社よりも優位性が高いことが分かってもらえるはず」とアピールしている。また、エントリー型のタワー型モデルも拡販製品に位置づけており、年度末商戦に合わせて特別価格で提供することも検討している。
デルの注目点はもう一つある。組織再編だ。デルは、グローバルレベルで進行中の組織改革を日本法人でも断行している最中で、「公共機関・大企業向けビジネス」「コンシューマ・SMB向けビジネス」「サービスビジネス」そして「パートナービジネス」に大きく組織を四つに再編する。パートナー支援部隊はこれまで複数の部門にあったが、それを今回、一つの部門に統合する。これにより、パートナー支援体制が強化されることは間違いなく、今後パートナー向けの支援内容が充実される可能性が高い。春以降にパートナーに対して順次説明する予定だ。
日本IBM
スマートなイメージとは裏腹の地道な活動
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| 小林泰子事業部長 |
日本IBMのパートナー支援活動は地味ではあるが、全地域でサーバーを拡販しようという本気度を感じさせる。そのことはセミナーや教育活動にみてとれる。その象徴が「PCサーバー販売フォーラム」と呼ばれるセミナーの開催だ。日本IBM製品のプロモーションだけでなく、サーバー市場の動向や、売れる提案方法などをレクチャーするほか、「サーバーの解体ショー」など、参加者を飽きさせないイベントも用意している。2010年は全国で9回開催し、約1500人もの参加者を集めた。また、「早分かり・深分かりセミナー」と称する勉強会もある。これは、販売パートナーごとに個別で展開する「出張勉強会」で、日本IBMのスタッフが顧客を訪問し、各パートナーの要望に合わせた内容で勉強会を開いている。対象は全国。2010年は270回開催し、1300人以上が受講した。その半分が地方での開催で、小林泰子・システムx事業部事業部長は、「パートナーも忙しい。そのなかで、いかに日本IBMを知ってもらえるようにするかが大切」と全国行脚、個別訪問の理由を説明している。
もう一つの特徴が、「IBM太鼓判構成」と呼ばれるソリューションパッケージだ。旬のソリューションを構成するためのメニューを日本IBMがつくり、IBMの専門スタッフが動作確認して、導入ガイドとお問い合わせ窓口の提供を付加してパートナーに提供している。事業部長の名前と組み合わせて「泰子(タイコ)の太鼓判」として知名度向上に努めている」(東根作成英・システムx事業部事業開発担当)とか。日本IBMというブランド力ゆえにスマートなイメージを抱かれがちが、それとは裏腹に、足を使って地道な拡販活動を行っているのだ。
検討の余地あり!
ブレード拡販のススメ
5年ほど前、ベンダーもメディアもx86サーバー分野で大々的に取り上げていたのが、ブレードサーバーだった。「エンクロージャ」と呼ばれるきょう体に複数のサーバーを差し込んで運用するのがブレードサーバーで、高い集積率による設置スペースの削減、運用コストの低減が見込め、その当時はどこもかしこもブレードをPRした。しかし、ベンダーのPR合戦をよそに、実際に導入したユーザー企業は一部の大企業に限定され、思惑通りには普及はしていない。現時点で、全x86サーバーのうちブレードサーバーが占める構成率は15%程度。5年前の予測では、2010年には30%には到達するという見方が多かったが、その予想は外れた。
しかし、今、ようやくブレードサーバーの拡販期がやってきたとみられる。メーカー各社が中小規模のブレードサーバーを用意してきたこと、価格が下がってきたこと、そしてブレードを導入する提案材料になるサーバー統合がSMBマーケットにも本格的に普及してきたことに、その要因がある。ブレードサーバーの導入には、特有の知識が求められるので、ITベンダーも販売に二の足を踏むケースがあるが、メーカー各社はその不安を払拭する技術・営業の両側面で支援策を用意している。数年遅れてブレード需要が高まる気配がある。扱うべき商材として検討する余地は十分あるはずだ。