メインフレームやオフコン、UNIXサーバーが衰退の一途をたどるなか、性能・品質の向上でサーバーの主役になったx86サーバー。2000年代に入り、販売台数は伸び続けてきた。しかしながら、リーマン・ショックでマイナスに転じ、仮想化・サーバー統合の流れで逆風が吹き始めた。青天井は終わりつつある。その一方で、シェア争いでは絶対王者に迫るメーカーも登場してきた。ハードウェアの要、x86サーバーの今を俯瞰する。(文/木村剛士)
figure 1 「市場規模」を読む
出荷台数は55万台が限界!?
2000年代に入ってから世界同時不況が起きるまで、x86サーバーは毎年確実に伸び続けてきた。クライアント/サーバー(C/S)型システムが全盛期を迎え、メインフレームやUNIXサーバー、オフコンに代わってx86サーバーを活用したシステムを構築するユーザー企業が増えたことが要因だ。2001年度(01年4月~02年3月)の出荷台数が33万300台だったx86サーバーは、リーマン・ショックの直前年度にあたる07年度は55万330台まで増加した。しかし、その後は2年連続でマイナス成長に終わった。今年度はプラスに転じるという観測もあるが、IT調査会社のノークリサーチの伊嶋謙二社長は、「今年度はプラス成長に戻るが、その後は大きな成長は期待できない。サーバーの仮想化、統合による出荷台数の減少は避けられない。クラウド向けシステムの構築で伸びる部分があるというプラス要素もあるが、結果的に横ばいかもしれない」と説明。国内市場の限界は「出荷台数55万台程度かもしれない」と推測している。
国内の出荷台数推移
figure 2 「勢力」を読む
絶対王者のNECに迫る富士通
この市場には、10年以上トップに居座る王者が存在する。それがNECで、1996年から09年まで14年連続でトップシェアを獲り続けている。薄利多売を戦略として多額のマーケティング費用を投じ、台数シェアだけを獲ることもできるが、NECの場合は台数も金額もトップで、まさに絶対的な存在。ライバルメーカーは、その牙城を崩すことができていないが、最近シェアを急伸させているのが富士通だ。08年夏に「国内で2010年度に30%のシェア獲得」という方針を示してから順調に推移し、昨年度(09年4月~10年3月)は、一昨年度のシェアに比べて台数で4.8ポイント、金額で2.2ポイント伸ばし、順位はデルを抜いて4位から3位に浮上した。上位5社のなかで、一昨年度比で唯一シェアを伸ばしたメーカー(台数)で「今、非常に強い存在」(伊嶋社長)。逆に元気がないのがデルで、昨年度比で最もシェアを落とした。日本HPと日本IBMは、シェアの変動があまりないのが最近の傾向だ。
2009年度のメーカー別シェア
figure 3 「購入方法」を読む
ユーザーの企業規模で大きなギャップ
ユーザー企業の企業規模(従業員規模)によって、サーバーは購入方法(経路)には違いがみられる。それを表しているのが右図。最小規模と最大規模の企業を見比べると、その傾向がはっきり読み取れる。従業員が100人に満たない中小企業の場合、SIerの営業担当者に頼んで調達するケースが多い。メーカー系と独立系SIerから購入する比率は、49.5%とほぼ半分を占める。一方、5000人以上の企業で過半数を超えるのは、メーカーからの直接購入だ。メーカーの営業担当者とウェブサイトを通じて購入するケースの合計が63.3%になる。大手企業は、購入するサーバーの台数も多い優良顧客。メーカーはこのような大手企業については系列SIerに任せることなく、自らが専任の営業担当者を置くケースが多い。そのため、メーカーの営業担当者から購入するケースが多くなる。その一方で、中小企業はサーバーを購入しても、情報システムとして利用するまでITベンダーの力を借りるケースが多く、SIerから購入するケースが自然と高まる。ただ、99人以下の中小企業で注目したいのが、全体の23.4%がメーカーのウェブサイトから直接購入していることだ。この比率は、企業規模に比べて突出して高い。「中小企業は必ずSIerから購入する」とは限らないわけだ。
ユーザー企業の購入経路
figure 4 「チャネル」を読む
国産は子会社、外資は独立系SIer
各メーカーの間接販売(SIerやITサービス事業者を通じての販売)では、強い企業に違いがある。日本のコンピュータメーカーは、必ずSIerとして子会社を数社保有する。例えば、NECグループでいえばNECネクサソリューションズで、富士通グループでいえば富士通マーケティング(旧・富士通ビジネスシステム)。両社はともに全販売パートナーのなかで、x86サーバーの販売台数はトップだ。国産コンピュータメーカーの間接販売は、圧倒的に系列SIerが強い。一方、外資系メーカーは、独立系やユーザー企業が抱える情報システム子会社を有力パートナーとして抱える。デル製品の販売に強い新日鉄ソリューションズ、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の販売実績が高い伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)がその代表例。そのなかで特異な存在が大塚商会だ。大塚商会のコンピュータの販売事業は、NEC製品の取り扱いから始まっていることもあり、NEC製品の販売台数は今も多い、だが、マルチベンダー化を進め、今では日本HPや日本IBMの製品でも有力販売会社として名を連ねる。大塚商会は、全国的に中堅・中小企業市場に強い。「FIGURE3」で示した通り、中小企業はSIerから購入するケースが多く、大塚商会が強い理由もうなずける。
各メーカーで販売実績が高い主なSIer